夏の個人山行 槇ノ沢八百谷
メンバー:CL・記録高橋(4) SL宮野(4) 気象高野(3) 装備清水(2) 食当安井(1)
遡行図は『東京付近の沢』の「滝川」「槇の沢」「八百谷」を使用。参考資料として『奥秩父100ルート』を併用。
他東大ワンゲル『ETWAS86年』、部内資料1995年原田p、他ネットから。
この山行のコンセプトは、“釣り”。1年生に沢登りの魅力一つである、釣りの面白さを知ってもらうことがねらいである。ゆえに釣り師清水の双肩にこの山行がかかっているとも言える。清水君、実はそういうことだったんですよ~。はてさてどうなることやら。
9/11(日) 国立―三峰口―出会いの丘
15時に部室集合、のはずだったが部室にいるのは3人だけ。清水は小遅刻、安井は大遅刻!時間が惜しいので、安井とは国立駅で合流という流れとなった。駅に着くとそこにいるのは申し訳なさそうな顔をしている安井くん。しかし遅刻くらい聡明なCLは想定の範囲内。反省しているのでお咎めなしでスル~。お花畑駅では宮野、高橋、安井が電車に乗り遅れる。これは全くの想定外であった。その日はタクシーで出会いの丘まで行って就寝。
9/12(月) 出会いの丘▲―1:00-仙道の途中―1:10-槇の沢下降点―1:10-滝川の沢床―1:10-槇の沢ゴルジュ手前―1:10-八百谷出合前の右からの枝沢出合▲
天気はかなりよい。豆焼橋を渡って砂利道を歩く。途中から登山道、そして仙道に入る。この辺のことはhttp://homepage3.nifty.com/somame/index.htmに詳しく書いてあるので省く。ただ、滝川への下降はかなり傾斜が急なことに加えて落石を起こしやすいので注意しながら下りなければならない。下りたところは槇の沢出合より上流。しばらく滝川を下ると水量の多い槇の沢に出合う。槇の沢は河原が長いこと続く。ゴーロ歩きがうんざりしてくるころになると、沢は不気味に暗くなる。すると核心のゴルジュ帯が現れる。ルートは東大ワンゲル86年の記録(ETWAS)に詳しく載っている。ゴルジュ入り口の右に踏み跡があるのでそれを辿ればいい。そしてトラロープの残置にしたがって下りれば問題ない。
その日はそのまま歩いて2.5万図の『槙の沢』の『沢』の字の辺り、右から枝沢が入ってくるところに絶好のポイントがあったのでそこで幕営することにした、と思う。釣りに興じたのは言うまでもない。釣りの指導員として来てもらった清水様様にご指導を仰ぐこととなる。自分や清水、高野も釣れただけでなく、安井も釣ることができ、本山行の目的は半分達成できた。彼にも沢での釣りの楽しさが伝わったようで何よりだった。この沢はかなり魚がいるように思えた。魚影は八百谷の廃小屋の近くまで確認した。
9/13(火)
▲幕営地―2:15―4mナメ滝後(奥秩父100ルートの5m後)―1:20―小屋跡―1:30―ツメ手前―1:10―稜線上―0:45―どこかの頂上で一休―2:50―将監小屋▲
朝5時45分から行動を開始。八百谷出会いに着くまでいくつかのテンバを目撃したので昨日のテンバを逃しても問題ない。八百谷出会いはわかりやすい。槇の沢本流に橋が架かっているからだ。ここは迷わず左にいく。
八百谷は薄暗く鬱蒼としている。奥秩父特有の不気味な感じがする。最初の滝は楽に直登。①3mナメ滝は右巻きで問題なし。
次に待ち構えるのが②4mトイ状ナメ滝。ここからの2時間は非常に緊張を強いられた。②4mトイ状ナメ滝は一見してまず巻きを考えたくなる。水量はそこまでではないが腰まで覚悟の深い釜、それをクリアしたところで取り付きが難しそうだったので諦める。実際オレはこの滝を登る自信がない。ここで濡れると後々に響くと思い右巻きを選択する。この右巻きも非常に悪い。事前の調査の通り、要所に残置があるがかなりの高巻き+足場が悪いため非常に怖い。②4mトイ状ナメ滝を越えたところで懸垂下降をしようと考えたが、迷う。この先踏み跡は続いているが、悪そう・・・ここで懸垂するにしても落ち口までの距離が不明のため、登り返しも十分ありえる・・・宮野と相談していると、偵察に行っている高野が道なりに行くことを強く主張するのでそれに従った。
踏み跡にテープ、残置とあり、正解ルートたる根拠はあるのだが、怖い。ロープをたくさん出さなければ安全は確保できない。またこの巻きは細いので一人ずつしか通過できない。危険箇所は2点。ハング気味に通過する足場の悪い箇所、その後続くルンゼのトラバース(足場がたやすく崩れる)。前者はロープで対処。残置は信用できない。後者は踏み跡が陥落しているからとくに危険。懸垂下降の用意をした。懸垂支点のある足場からずり落ちるようにルンゼへ取り付く。その後はルンゼ斜面を蹴り込みながらの通過となる。途中つかむことのできる木が全くないので苦労する。ルンゼを超えると数人が留まることのできる足場にでる。そこで懸垂解除で一息つくことができる。ここまで一連の作業はトップの高野に任せた。
全員が突破するとお次は沢床に降りることに。ところがこの降り方でオレと高野で口論となる。清水・安井は傍観。宮野は最悪なことに偵察に行ったきりでこちらのことなどお構いなし。次の滝まで突破して用を足しに行ってしまった。争点は懸垂で下りるか(高野)、クライムダウンで下りるか(オレ)。宮野がなかなか難しいと言っていたこともあり高野は懸垂を主張した。しかしオレはこんなところでザイルをまた広げるのは嫌だし、落ちても大丈夫なレベル(オレ基準)だ。またこの程度ならノーザイルで行くレベルにあってほしいのでクライムダウンを主張した。CLのオレがクライムダウンを決定したのに、高野はいっこうに主張を取り下げない。だから口論になるわけである。結局オレが強権を発動、清水を味方につけて事態は収拾された。ロープを出すだけでみんな安全に下りることもできた。最後に高野も謝ってくれたので落着した。今となってはいい思い出です★
ちなみに4mトイ状ナメ滝を越えたところで支点を見つけて早めに懸垂、沢床に降りるのがここはいいかもしれない。その先の滝の突破は問題ないと思うので。次に行く方はじっくり考えてくださいな。
次の滝は大きさに似合わず左から簡単に突破。上りきったところで宮野と合流。「いや~先に行って悪かったね~」といつもの調子で。次に待ち構えるのはどでかい滝。遡行図には対処は載ってないし、東大ワンゲルや最近行った人の記録でもこの滝に関しては記述がない。おそらく『東京付近の沢』の4mナメ滝に当たる滝であろう。しかしその迫力たるや!『これどーすんのよ!?』と思わず言ってしまいそうな滝である。
直登はまず不可能なので、右のルンゼ(長さ50mくらい)からの高巻きになる。細い紐が垂れ下がっていたが、こんなものでは何の補助にもならない。ここは本山行の最大の山場!このルンゼは悪すぎる!本当に慎重に歩を進めなければ落石は必至。しかも大きな石がごろごろしているので後続へは極力配慮しなくてはならない。また最後に行くまで木が全くないのでロープは出せない。トップが石を落とせば後続に当たる。トップにかかるプレッシャーはヤバイ。その年一番の恐怖だった。
上へ上がれば上がるほど足場が脆くなる。ルンゼ自体何度も崩落を繰り返したせいか、深いルンゼになっていて左右に木がない。樹林帯に行くまでかなりの緊張を強いられる。最上部までいくと木があったのでそこからザイルを足らすことにした。後続には途中で待ってもらっていたので落石のないように細心の注意を払ってザイルを投げた。ザイル使用時にも落石に注意しなければならない。
やっとこさ全員無事にルンゼを上り詰め樹林帯にゴールすることができた。次なる問題は沢床に降りること。はっきりしたふみ後がなかったので懸垂下降をすることに。かなりの距離を懸垂するのでダブルか~と思ったが、途中からロープを垂らすことでなんとかなった。沢床に降りて長い一休をとる。8時調度のところだった。
その後は特に問題となる箇所はなかった。④二俣を右に入ってもまだ魚影があったのに驚いたくらいだった。1時間とちょっと歩くと廃小屋も確認できた。この小屋は使用不可。平たい場所もなかったのでここをテンバのあてにするべきでない。ここで一休。10時40分にそこを出た。
さらに進むと⑤奥の二俣(1:1)。これを左にとると⑥7mナメ滝。ここからかなり傾斜のきつい滝が連続してなかなか面白い。どれも直登、あるいは右巻きで難なく突破できるので楽である。しかし、傾斜がどんどんきつくなっていくので足が疲れる・・・
次第に水が少なくなっていく。最後の滝を突破しツメの前に一休を取ったのが12時10分。1時間と10分ほどで登山道(標高1990mの南)に出ることができたのでそんなに苦労はしないだろう。巨岩とか目印になるものがあった。巨岩から景色が一望できてよかった。登山道は明瞭なのですぐにそれとわかる。このツメのルーファイも目的の一つ。満足です。
稜線上に出たのが13時35分。今日は頑張っても下山は無理かな~。東仙波を越え、・・・・・将監小屋についたのが17時30分。小屋の管理人はいなかった。食事を作る頃にはあたりはもう薄暗くなっていた。ここのテンバは水が豊富。じゃんじゃん使えるのでお勧め。
長い一日が終わった。まだ下山してもいないのにこの爽快感といったら、飛び上がりそうなくらい!それなりに難しい沢だったので達成感もひとしおだった。翌日は短い下山だから楽しい夜を過ごすことができた。
9/14(水)
▲将監小屋―0:55―分岐―?―三ノ瀬
本日は三ノ瀬に下山のみ。下山口で奇跡的に携帯が入り、タクシーで塩山へ。みんな本当にお疲れ様!
渋々だけど結局は楽しんでくれる宮野、なんだかんだ言ってもオレや宮野を慕ってついてきてくれる高野、釣りの伝道師清水(かなりあてにしていた)、この山行の主役の安井、本当に感謝している!ありがとう!
リーコメ
奥秩父は最高です。かなり奥深く入るので覚悟が必要だけど、樹木がたくさんあるから対処は何とかなることが多い。滝もホールドがしっかりしているので登りやすい。魚釣りや読図、ルーファイの要素も一通り実践できるのでまさに総合力の養成にはもってこい。
しかし、事前の準備はかなり入念にしなくてはならない。もともと情報が少ないのから。情報を完璧にした上で奥秩父には挑戦してもらいたい。
奥秩父の原生林の美しさ、静寂、フィールドの壮大さを感じ、その魅力に気づいてもらえたら計画者の目的は果たせたと思います。