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2024年 - 沢登り - 高田川ナル谷


日時 2024.5.2~3

山域 南紀 高田川ナル谷(2級上)

文責 辻

目的 昨年のリベンジ。

メンバー CL:藤田(W3)、SL・天気・医療:辻(W3)、食当:山口(W3)

天気 晴れ。水量普通。

地図資料 25000分の1地形図 「紀伊大野」、「新宮」

山と高原地図 「高野山・熊野古道」2021
       『関西起点120』「ナル谷」「滝本北谷」「滝本本谷」
       『南紀の沢』「ナル谷」「滝本北谷」「滝本本谷」

電波 発電所までは通じる。下山後は那智高原公園まで電波は通じない。

装備 
ツェルト×1、医療袋、医療ポリ、病人食、PR×2、ザイル×1(9mm40m)、ハーケン、バイル(ハンマー)、ヌンチャク、アッセンダー、軽アイゼン、通常沢装備、登山靴(アプローチシューズ可)、熊鈴、シュラフ、マット、武器・食器、タープ、釣竿
⇒沢全体を通して魚影は小さい。一応釣竿を出して見たが、釣れたのはメダカに毛が生えたサイズの雑魚一匹だった。

コースタイム
<一日目>
高田バス停(9:40)-0:30-発電所(10:10~30)-0:20-一ノ滝下(10:50)-1:00-二ノ滝下(11:50)-0:40-三ノ滝下(12:30)-1:10-水取入口(発電所施設?)(13:40)-1:15-トチの巨木(14:55)-0:35-5m堰堤(15:30)-0:45-ビバーク地▲(16:15)
沢中 5:45 沢外 0:30 合計 6:15
<二日目> 
ビバーク地▲(5:10)-0:20-459m分岐(5:30)-1:05-巨岩帯上(6:35)-2:25(トップの滑落による処置を含む)-8m滝上(9:00)-0:35-幅広10m滝下(9:35)-0:25-幅広15m滝下(10:00)-0:50-石垣(10:50)-0:55-中辺路出合(11:50~13:00)-0:30-船見峠(13:30)-1:20-那智高原公園(14:50)
沢中 6:40 沢外1:50 合計 8:30

コース記録(YAMAP)


【詳細】
2023年のGWに敗退した南紀沢巡りにリベンジしようと、計画を練り直してもう一度挑んだ。しかしながらCLの滑落事故もあり、残念ながら再度ナル谷のみの遡行で撤退となった。前年からの計画の変更点としては、コースタイムの超過を想定しナル谷中盤で一泊したことが大きい。対処に時間を要する巨岩帯~10m+8m滝への苦戦を想定していた。なお当初の予定ではナル谷を遡行後滝本北谷を下降し、滝本本谷を遡行して計3泊4日するつもりであった。
前日5/1の22時頃バスタ新宿から高速バスに乗り、翌朝8時頃に新宮駅に到着した。さらに9時ごろ新宮駅からバスに乗り高田バス停に9:40到着。発電所まではスニーカーで歩いて、発電所で沢装を装着し行動開始した。
以下、遡行中の対処について順に記述する。

入渓まで:高田バス停から林道を歩き、30分ほどで発電所。発電所から踏み跡にしたがって歩いて20分で一ノ滝へ。ハイキングコースと看板がある割に踏み跡は薄い。途中で踏み跡を見失ったが、思ったよりも踏み跡は上の方についていた。

・一ノ滝15m
計画通りの対処。一ノ滝は右岸の踏み跡をバック気味に登り、途中から上流方向へ折り返して高巻く。滝口近くは危険なため多めに巻く。下降は取水道を利用、もしくは右岸巻き。
・二ノ滝40m
手前の岩間滝3mは、はじめ右岸から登ろうとしたが失敗。結局前年と同じ左岸を、トップが巨石の間からショルダーで無理やり登り、後続は荷物を先に引っ張り上げて空身で登った。
二ノ滝本体は水流が多くとても登攀できないと感じたため、踏み跡に従って素直に左岸巻き。ロープは出さなかったが30分弱かかった。
・三ノ滝(ナメ15m)+連瀑帯
三ノ滝は左岸から滝の右端を渡るが、難しくない。どちらかというと上の連瀑帯が厄介で、水量も多く流される危険があり、かつ岩がぬめっていて滑りやすい。特にはじめの7,8mほどの段々では安全を期してロープを出したのだが、滝上で確保支点を取るには流れを渡って右岸の立木を使う他なく、かえってCLを危ない目に遭わせてしまった。したがってこの連瀑帯は全員フリー直登が望ましい。取水施設のコンクリートが見えてきたところで左岸に渡り、石垣をよじ登って滝上に上がった。
・取水施設~5m堰堤
ダラダラとした河原歩き。そのくせしてちょくちょく巨石帯が出てくるので厄介。地形図上では尾根にあがってショートカットするルートがあるので取水施設から偵察してみたが、踏み跡は見当たらなかった。あまり期待しない方がいいと思う。トポ図にある「トチの巨木」はまあまあ分かりやすい。
沢を塞ぐほどの大岩が見えたら、すぐに堰堤が見えてくる。堰堤は右岸から頑張って登る。
・ビバーク地
5m堰堤を過ぎて20分ほど歩くと両岸に広い林が広がる。適当なところでタープを張って、その下にツェルトを敷いて寝た。近くに焚火跡もあった。
一応ここで釣竿を出したが、浅瀬で針が引っかかるため釣りには向かない。前述の通り雑魚しか釣れなかったし。
・巨岩帯
新規購入した『南紀の沢』に書いてある通りに対処した。↓
「右岸支谷の出合いで右折する本谷に入ると、わずかに先で左に曲がりだす付近から傾斜の強いゴーロ帯に突入する。最初に右岸壁に沿う3m滝が現れ、そのあとには幾つかの岩間滝が架かるが問題なし。ところが次にかかる10mの岩間滝は直進できずに左岸を巻かされるし、続く岩間滝5mにもつまる。ここは右岸のルンぜから巻くが、強い傾斜や挟まる巨岩に一苦労。
前年は大苦戦しただけに、今回はこれに従ってスムーズに突破できたと思う。ポイントは10mの岩間滝が出てきたところで左岸巻きを逃さないところであろうか。最後は右岸の壁沿いに横道(踏み跡?)があるので、そこを目指したい。
・10m+8m滝
核心であり今回の事故現場。巨岩帯を越えた先に、大きな釜を持った水量たっぷりの10m滝が現れる。水流がかなり強いため直登は不可と判断して、10m滝は前年と同じく右岸からのトラバースをとった。右岸は壁が三段になっており、その一番上の段が滝上まで通じているため、10m滝の手前左岸でまず15mほど段差を登る。
ここでCLが(SLの制止を聞かず)ザックを背負ったまま、一段目から二段目をフリーで突破しようとしたところ、手につかんでいた木の根っこが引っこ抜けて10mほど落下。ザックがクッションとなって外傷は負わなかったものの、ヘルメットごしに頭を打ったようで頭痛を訴えていた。このときにとったルートは手も足もホールドが細かく、根っこに頼らざるを得なかったのが要因だろう。それを踏まえても、ロープは出してグラウンドフォールは回避するべきだったと思うが。マジで目の前で死んだと思った。肝っ玉が冷えた。この時点で遡行を打ち切り、検査のため中辺路から下山する決定をした。
結局辻ビレイのもと山口君が空身リードで木につかまりながら無理やり登り、続いて辻が確保を受けながら空身で登って、二人で荷物とCLを引っ張り上げた。20kg近いザックを引っ張りあげるのはかなりの重労働だった。
二段目から三段目に上がるにも3mほどの直壁を登る必要があり、ここは山口君にショルダーで登ってパワーロープを出してもらった。木は沢山生えているので支点には困らない。
三段目からは8m滝が見えるまで問題なくトラバースできるが、今回は前年とは異なり8mもそのまま右岸巻きすることとした(前年にとった8mの左岸巻きが厳しかったため)。こちらもかなりシビアなトラバースだったが、30分ほどかけて突破した。8m滝の上に9時到着。
8m滝の少し上には『南紀の沢』に記述のあるCS1mがあり直進を遮られる。これは左岸から巻いた。
・幅広10m滝
前年同様の対処。左岸巻き。
・幅広15m滝
前年同様の対処。右岸巻きして落ち口へはパワーロープを使って懸垂下降。
・ツメ
前年同様の対処。だらだら歩くだけ。
・下山
緑茶先輩が大分ダウンしてた。俺は俺で変なテンションだった気がする。

【総評】
直前の勘七ノ沢で調子がよかっただけに、自信を打ちのめされた遡行だった。特に泊まり装備の重量により、各所各所で体力の消耗を迫られた点は辛かった。やはり体力錬成をしない現役の傾向が弱点としてあらわれたように思う。そうでなくとも装備の軽量化に取り組む必要はあったと思う。
沢の内容としては、大変綺麗な沢ではあるがあまり後輩にオススメしたいとは思わない。かなりのロングコースであり、かつ巨岩帯に悩まされるシーンがかなり多いので、たくさん荷物を背負いたがるワンゲルにとってはあまり楽しい合宿とはならないだろう。もし南紀の沢に行きたければ、ぜひ滝本本谷・北谷の方に行ってみてほしい。



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