平標山
日時 2024.2.24
山域 谷川山塊 平標山
文責 辻
メンバー CL:辻(W3)、SL:長尾(W3)、医療:前川(W2)、無職:大内(W2)
天気 曇りのち晴れ、積雪量少(下部には数cm新雪が積もっていたが、山頂部は吹き飛ばされてる。ブッシュだらけ)。ヤカイ沢はブッシュも岩面も見えていてとても滑れない。 ⇒苗場スキー場で110cm
雪質 山頂~平標山の家までクラスト。ところどころ新雪もあるが吹き飛ばされていて滑るとガリガリ音を立てる。
地図資料 25000分の1地図「三国峠」
山スキールート212「平標山」
コースタイム
火打峠駐車スペース(7:15)-0:20-橋を渡って林道分岐(7:35)-1:25-1400m地点沢分岐(9:00)-1:25-稜線上(10:25)-1:15-平標山(11:40)-1:20(アイゼン歩行20分、滑走準備20分を含む)-平標山の家(13:00)-2:00-平元新道登山口(15:00)-0:20-駐車場(15:20)
合計8:05
コース記録(YAMAP)
同日滑走の参考資料(YAMAP)
【詳細】
W1なし、上級生の山スキートレということでBCで人気の平標山に行ってみた。辻CLのもと6回目の山スキーとなってそろそろ中級者か、などと思っていたが、雪不足と悪雪、それから急斜面に悩まされて悪戦苦闘の一日となった。以下当日起こった事案と反省を含めて記録する。
小平を3時過ぎに出発、湯沢ICを降りて火打峠に向かう。この日はスタッドレスタイヤを借りられなかったのでチェーンを持参したが、火打峠まで路面上の積雪はほとんどなかった。とはいえ凍結が怖いのでICを降りる前にチェーンを装着する(人生初めてのチェーン装着は大変だった。焦るといくない)。
買い出しにと湯沢のセブンイレブンに寄ったが、夜明け前でも駐車場が満杯だった。流石は湯沢である。買い出しは東京で済ませておこう。
火打峠スノーシェッド北側の駐車スペースに駐車、わりと広々としていて朝7時前にはまだ一台も止まっていなかった。その場でシールを装着してスタート。
駐車スペース~林道あたりは10cmほどの新雪が積もっていて楽しい。一本道なので迷うこともないだろう。
途中橋を渡ったところで冬道への分岐がある。今回は橋を渡ってすぐ、小さな標柱のところで左に進んだが、他のパーティはもう少し奥の方から冬道に入っていた。私たちのルートだと小さな堰堤を越えねばならなかったので、おそらくそちらの方が楽だったろう。30分ほど歩くと自然と冬道どうし合流する。
高度を上げるにつれ少しずつ斜度も増していき、樹間から見えていた平標山直下の斜面が次第に近づいてくる。ヤカイ沢の滑走斜面が目前になるとトレースは南東方向へと折れ曲がり、支尾根へとツメ上がることになる。この途中でヤカイ沢方面を見てみたが斜面は低木だらけで滑走斜面には岩面もところどころ露出していた。暖冬で雪が少ないとは聞いていたが、この雪量ではとてもドロップできないと感じる。またトレースが折れ曲がるあたりからはかなり樹間がキツくなっていてスキーだと取り回しが辛い。雪面もガチガチでシールが効きにくかったのでシートラアイゼン歩行に切り替える。
まわりもみな板を担いでいたので間違いではなかったろうが、ここから支尾根上部まではかなりの急斜面で辛かった。50°近い斜面が延々と続くので中々休めない。今日のコンディションではまずアイゼンが無ければ登れなかっただろう。
支尾根上部からは国境稜線を経て平標山山頂を目指すが、ここも少雪のため低木だらけでとてもスキーでは登れない。そのままシートラで尾根線上のトレースにしたがって登る。途中板を担いで降るスキーヤーともすれ違った。
国境稜線からはブッシュの東側を登るが、思いの外遠い。まあまあ強風でかつホワイトアウトだったので辛かった。そんなこんなで平標山山頂到着、風も強いし寒いのでさっさと撤退する。
当初は山頂部からヤカイ沢目掛けてドロップする予定だったが、ホワイトアウトと少雪の状況から平標山の家方面への下山とする。ここも強風であおられ続け、かつ山の家まで滑れるか不明だったためしばらくアイゼン歩行で降る。
支尾根との分岐あたりで霧が晴れてきて、山の家が見えてくる。ここは思ったより広い斜面で、これなら滑れるとみて滑走準備をする。しかしこの判断が甘かった↓
大内が先に準備ができたので待機させて、辻が続いてその下へ行こうとターンしたところ、ガリガリのクラストで取り回しが出来ず後ろ向きのボーゲンで斜面へ。死ぬ!と思い横に転んで身体は止まったが、その拍子に板が外れて片方は谷へと流れていった。CLとして有り得ない失態だ。
ひとまず横滑りで後続を近くまで来させて板を回収しに行く旨を伝え、大内には先に板の捜索、長尾・前川には安全な斜面での待機を指示する。この後焦った辻がそのまま谷底へ降りようとするが、クラスト斜面でスリップしそうになり、滑落しそうになったところでアイゼンを履きなおした。
しばらくすると谷に降りた大内から見つかったと声がかかる。ブレーキのおかげでわりと上部の方で止まっていたらしい。九死に一生を得た。辻は板を担いで斜面へ復帰し、板を履きなおす。
その後ガリガリの斜面を横滑りで突破し、平標山の家へと着いた。
山の家からは夏道に沿って滑ればよい…と見ていたが、ここも想定が甘かった。まずドロップしてすぐ急斜面になり大いにビビる。4,50°の上級斜面に所狭しと樹が立ち並んでいる感じだ。午後になって少し雪が緩んでいたため少し雪崩の心配も感じた。
そしてよくなかったのは夏道にしたがってしまったことで深い谷にはまってしまったことだ。本当は山の家からドロップしてすぐ右に見える明瞭な尾根に早めに乗らなければならなかったが、そのまま目の前の斜面を滑るうちに谷線に横切られてしまった。十分に地形図を確認しなかったツケが回ってきた。仕方ないので板を担いで谷に降りて尾根に復帰することにするが、この谷底から尾根に乗り上がる夏道ルートも滑り落ちれば谷底へ数10m落下することになり、ただではすまない。やむを得ず再度シートラアイゼン歩行に切り替えるが、ピッケルなしでの急斜面の下降はとても危険で、後ろ向きに前爪を指しながらくだっていった(前を行ったおじさんはよく軽アイゼンだけでここを突破したものだ)。しばらくすると30°くらいの斜面になってここなら滑れると判断し、再度滑走モードに変更。ルートどりは大内に任せて慎重にくだっていった。
看板のある登山口までいくつか沢を渡るが、トレースは明瞭で問題なかった。このあたりはツリーランを楽しめるくらいの感じであった。
登山口からは林道を駐車スペースまで。少し登りもあり辛かったが、ダラダラと滑って20分ほど。ここが唯一楽しく滑れたところかもしれない。
なお下山後は温泉に行くつもりだったが、車を動かす前にチェーンを外そうとしたところでトラブル発生。辻が無理矢理チェーンを外そうとして車軸に引っかかってしまい、取れなくなってしまった。やむを得ずタイムズ経由でロードサービスを呼んでもらったが、結局本当にただ引っかかっていただけで左にハンドルをきった状態で手を突っ込んでもらって、その場でチェーンは外してもらえた。記録記入時点(2/27)でまだ確定した金額は届いていないが、どうもロードサービスの手配・タイムズの休業補償で5万円ほどかかるらしい。すったもんだである。一人泣きそうになりながら帰路に着きました。
【総評】
2018年の記録の「2回目に最適」との記述から選んだ山であったが、悪雪に苦戦したとはいえ自分たちにはまだ早かったのかもしれない。辻が板を流したのは言うまでもないが、地形図上での等高線の詰まり方から実際の斜度を想定できなかったところや、わずかに表示された谷筋から滑走時の展開を想像できなかったところは経験値の少なさによるものというほかない。いざ危ない場面と出くわしたところで怪我無く対処できたのはよかったが、それでも一歩間違えば命を危険に晒すような選択をとってしまったことは反省せざるを得ないだろう。以下に今回の反省点と改善案を列挙する。
・CLの板流し ⇒下手くそならリーシュコードを付ける。雪面状況が分からないうちは無理にターンせず、横滑りで状況を見る。
・谷への迷い込み ⇒地形図には沢登り同様谷線を書き込む。ドロップ前には地形図と実際の地形とを照らし合わせ、目的地までのルートをお互いに確認しあう。
・滑走の難しい急斜面の下降 ⇒まずは事前に急斜面に入らないルートどりを考えておく。またやむを得ずシートラで下降する場合を想定し、アイゼン・ストックでの下降法を確認しておく。
その他各自スキー技術や体力面での反省もあるだろうが、それは一朝一夕で解決できることではないので、まずは事前に地形図をよく見て実際の地形を想像しておくこと、それから滑走時には突っ込む前に地形図からその後の展開を考えてドロップすることを身に着けておきたい。
以下各自の反省↓
辻:これまでキチンと上級者の指導を受けないまま後輩を連れていっていたが、今回は流石に自身の経験不足による危うさを感じた。谷への迷い込みでは当然前を行く後輩の判断にも誤りはあったろうが、それを自分が修正してやらなければならなかった。特に今回は直前に自身が板を流す失態を冒して多少気が動転していたのだと思う。しかしメンバーの命を預かっている以上そこで冷静さを取り戻して対処しなければならなかった。これが元部長というのであれば部としてのレベルもタカが知れているという他ないだろうし、今後起こり得る事故を防ぐためにも制度作り・教育には十分取り組まねばならないと思う。
長尾:今回の反省点は主に2つある。1つ目は、あまり慣れていないアイゼンでの歩行が多かったということもあるが、いつもより行動中他のメンバーや周囲の状況に気を配れていなかった点である。もう一つは、下りの滑走時に、楽観的になりすぎてしまったという点である。先頭を行っていたメンバーはスキーがうまいので大丈夫だろうとあまり気にせずに後ろを滑って行ってしまった。確かにメンバーを信頼するということも重要ではあるが、確認という意味でも判断に問題はないかということをもう少しよく考えていくことが必要であったと感じた。これらを改善するために、いつもと違う状況でも余裕をもって力を出せるようもっと日頃のトレイニングをしっかりとやる必要があると感じた。加えて、自分がリーダーでない時であっても自分たちが地形図のどのあたりにいるのかという判断を可能な限り自力でできるようにならなければならないと感じた。
前川:先週の四阿山で下り時にけがをしたものあり、平標山の家までの凍結した斜面を下るのは中々に怖かった。凍結していてスピードを抑えづらかったのはあるものの、登りのアイゼン歩行で体力を消耗しており、横滑りの姿勢に疲れて止まることが複数回あって時間がかかってしまった。体力養成は前提だろう。そもそも平標山頂から山の家までは、アイゼン歩行のみで行く選択肢もあったと思う。時間が押しており、アイゼン歩行だけではつまらないというところもあったが、地面が凍っていて、道幅が狭いこともわかっていたので安全策も必要なのだろう。また、下り時はセカンドで大内の後ろを行っており、もう少し慎重に滑るルートを自分でも考えていれば危険性を指摘して、谷に入りこむことも、アイゼン歩行に切り替える必要もなかったのではないかとの反省が残る。
大内: