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2023年 - 長期縦走 - 北アルプス縦走(室堂~新穂高温泉)


北アルプス縦走(室堂~新穂高温泉)

日時 2023.8.1~6
山域 北アルプス中南部
文責 辻
メンバー CL:辻(W3)、SL:長尾(W2)、食当:大内(W2)、医療・天気:田中(W1)
天気 下記詳細参照
地図資料 山と高原地図「剱・立山」2023、「槍ヶ岳・穂高岳」2023
     日本アルプス名100ルート(辻所有)


コースタイム
【1日目】室堂駅(12:20)-0:45-一の越山荘(13:05~35)-0:45-雄山(14:20~50)-0:30-一の越山荘(15:20)▲ 計2:00
【2日目】一の越山荘(4:10)-0:25-分岐(4:35)-1:45-獅子岳(6:20)-1:00-ザラ峠(7:20)-0:25-分岐(7:45)-0:15-五色ヶ原山荘(8:00)-0:45-鳶山(8:45)-0:45-越中沢乗越(9:30)-1:05-越中沢岳(10:35)-1:40-スゴノ頭(12:15)-1:00-スゴ乗越(13:15)-0:45-スゴ乗越小屋(14:00)▲ 計9:50
【3日目】スゴ乗越小屋(6:30)-1:05-間山(7:35)-1:55-北薬師岳(9:30)-1:15-薬師岳(10:45)-0:55-薬師岳山荘(11:40~12:10)-0:30-薬師平ベンチ(12:40)-0:40-太郎平キャンプ場(13:20)▲ 計6:20
【4日目】太郎平キャンプ場(5:10)-0:20-太郎平小屋(5:30)-0:40-左俣出合(6:10)-1:10-薬師沢小屋(7:20)-2:00-木道末端(9:20)-0:20-雲ノ平(9:40~10:00)-0:30-雲ノ平山荘(10:30~11:20)-1:40-高天原峠(13:00)-1:20-高天原山荘(14:20)▲ 計8:00
【5日目】高天原山荘(4:40)-0:50-水晶池(5:30)-1:40-岩苔乗越(7:10~7:30)-0:50-水晶小屋(8:20)-0:30-水晶岳(8:50)-0:30-水晶小屋(9:20)-0:40-ワリモ北分岐(10:00)-0:55-鷲羽岳(10:55)-1:15-三俣山荘(12:10~12:40)-0:50-三俣蓮華岳(13:30)-1:35-双六小屋(15:05)▲ 計9:35
【6日目】双六小屋(5:40)-1:00-弓折分岐(6:40)-0:50-鏡平山荘(7:30)-0:30-シシウドヶ原(8:00)-0:50-秩父沢出合(9:00)-0:35-小池新道登山口(9:35)-0:25-わさび平小屋(10:00)-1:05-新穂高温泉(11:05) 計5:25

合計41:10


【詳細】
2023年度の長期縦走。長期経験者が昨年度参加のCL辻しかいない中下級生を連れての長期縦走復活を目的とし、室堂から上高地を目指した。
結果としては台風が接近する中計画の短縮を余儀なくされ、さらに双六小屋でW1の体調不良により槍ヶ岳を目の前にして下山することとなった。

<アプローチ>
前日22:30バスタ新宿発の高速バスに乗り、富山駅から立山黒部アルペンルートを乗り継いで室堂までアプローチした。なおこの高速バスが途中故障し、3時間近くの遅れをとった。これにより初日、2日目の計画変更を余儀なくされた。
立山黒部アルペンルートについては言うことなし。シーズンということもあって観光客でごった返していたが、ケーブルカーでは荷物を荷台に置けたりして楽だった。
そういえば新宿バスタからずっとどこぞの大学生連中と一緒だったが、あれはどこの何だったのか…
<1日目>
室堂についてからも計画の練り直しに時間をとり、出発したのは結局12時過ぎ。元々は初日で五色ヶ原キャンプ場まで行く予定であったが、今回は一の越山荘に(課金して)泊まり、雄山のピストンに留めることにした。
一時は雷鳥沢に宿泊し、二日目に立山三山から五色ヶ原まで、三日目に12時間かけて太郎平までということも考えたが、現実的でないとして二日目にスゴ乗越まで行けるよう一の越山荘を利用した。なお山荘は素泊まりで6000円、お値打ちではあるが痛い出費である。
室堂駅はとても綺麗、初めての来訪だがこれはまあ立派な観光地である。すぐ近くには水汲み場もあり、登山者は皆ここで水を汲むようだ。旨い。写真撮影も程々に山荘に向けて出発。この間は全て石畳で整備されているがこれが何とも歩きづらい。そして初日の重荷に耐え切れず筆者の膝が崩壊した。せいぜいが24,5kgだろうが、普段歩荷訓練をしないことがたたった。結局他3人に大きく遅れをとりながら山荘まで歩く(部長ながら何とも情けない話である)。山荘に着くとまず先にチェックイン手続き、すぐに部屋に通してもらえた。山荘は充電設備まで整っていて大変便利。サブザック以外は全て部屋において空身で雄山ピストンとした。
雄山までの道は中々急な岩場。危険個所もないが、落石には十分注意したい。また登りルートと下りルートで仕切られてるので混雑時は要注意。山頂に着くと直に大雨が降り始めた。濡れなかっただけマシだが停滞を余儀なくされる。山頂には社務所があり祈禱をしてもらえる。元々する予定はなかったのだが、どうも山頂碑を見に行くには祈禱料が必要だとかなんだとかで700円だか払って祈禱を受け、筆者が一人で山頂に行ってきた。後から調べるともう少し待てば要らなかったとか何だとか…よくわからん。その後は山荘まで引き返して飯食って寝た。大内の牛肉炊き込みご飯は中々美味だった。
<2日目>
3時に起きて山荘内で朝飯。一時間ほどで準備して出発する。初め筆者がルートを間違え山荘に向かって左の階段を降りてしまったが、縦走ルートは山荘に向かって右から浄土山に向かう道だ。できれば前日の明るいうちに確認しておきたい。出発して30分ほどで始めの小ピークに着くと、朝日を受ける雄山が望めた。そしてこれから入る縦走ルートも一望でき気合が入る。ここからはまず龍王岳を左に見つつ坂を降り、鬼岳当面のトラバースから獅子岳を目指す。ここは事前に雪渓の情報があったが、今年は積雪が少なかったのかほとんどなく、一ヶ所20mほどのトラバースがあるのみだった。これも十分カットされていて軽アイゼンも不要だった。その他ハシゴが1,2箇所あったが大して危険はない。鬼岳からザラ峠までは鬼の降り(鬼岳だけに)。五色ヶ原の絶景が望めるが、ハシゴも連続してそんな余裕はない。ザラ峠でようやく一息つける。五色ヶ原前後は木道もよく整備されていて楽しいトレッキング。五色ヶ原山荘では山荘内のヤカンから給水させていただいた。ありがたい。またちょうど物資補給のヘリを見られたのもラッキーだった。
五色ヶ原の直後鳶山からは手前に越中沢岳、次に白い薬師岳、遥か彼方に槍ヶ岳と一望できる。ここからも辛いアップダウン。越中沢岳までは緩い登りだが、その後はまたも鬼のような降り、スゴノ頭を挟んでまたスゴ乗越まで一気に降る。心が折れそうになるが何とか持ちこたえ、スゴ乗越で全員ダウン。長休憩を挟んで最後の小屋までの登りを行く。この辺りは木々で鬱蒼としているのが鬱陶しい。やっとの思いで小屋に着くと歓喜の声が上がった。特にW1田中君は相当堪えたようでうずくまってしまった。
スゴ乗越小屋は一泊1000円。ただしトイレが一回100円、給水にも1L100円かかり、コミコミで1500円といったところだろうか。テント場は思いの外広くゆったりとスペースが取れた。この日はマカポテだったか。あまり覚えてない。
<3日目>
この日は大して長くないので5時起床のゆっくりスタート。しかし筆者が帽子を見失うなどして結局1時間半かかってしまった(情けない)。スゴ乗越小屋から北薬師岳まではダラダラとした登りが続く。始めは樹林帯だったが次第に開け、気持ちのいい稜線歩きとなる。間山から先は東側に切れ落ちた崖を歩くので要注意。難しくはない。またこの辺りで複数羽の雷鳥を確認し、気分をよくしてくれる。登りの途中だと手前の北薬師岳の方が急峻で高く見えるが、奥ののっぺりとした方が主峰の薬師岳でこちらの方が僅かに標高が高い。この間は細い稜線が続き、すれ違いには要注意。眼下には雄大なカール地形が広がっている。薬師岳山頂には綺麗な社が建っている。最近建て替えたのだろうか。ここで顧問中田教授からのお見送り品発動、ウォーターメロンチップス(ぶっちゃけよくわからん味だったことはナイショ)。長尾君が貪り食ってた。山頂から太郎平までは特に岩場もなく、平凡な降りが続く。なお途中田中、辻が腹痛を起こし薬師岳山荘にて長休憩。トイレ代300円、高い。太郎平キャンプ場に着くと既に多くのハイカーで賑わっていた。我々も水を浴びてしばらくしてテントをたてた。ここはとにかく水がうまかった。水場じゃばじゃば。田中君は前日同様テント内でダウン。熱中症気味か?晩飯は白米とマーボー春雨。
<4日目>
4時起床の5時過ぎ出発。田中君の体調不良があり計画の見直しも行ったが、薬師沢沿いのトラバースは危険とみて計画書通りのルートをとった。出発直後、太郎平小屋では久々に電波が入ったので天候を確認、台風の接近はあるものの続行可と見る。小屋から薬師沢までの下降は木道が続くが、ちょくちょく折れてたりなんかして何とも言えない。しかし渡渉地点は全て丈夫な橋がかかっていてこれだけでもありがたいというものだろう。途中ベンチがあったので休憩。薬師沢小屋は沢の目の前にあったステキな小屋。沢から直に水が汲めてこれが旨い。田中君のおトイレを待ちつつ長休憩を挟む。薬師沢小屋から雲ノ平へはこの縦走ルートで最も辛い急坂、木道末端までの500m弱を2時間かけて登る。始めに小屋前の吊橋を渡り、ハシゴを昇り降りして一旦沢床に降りる。ここから高天原への分岐を経て急坂に入る。始めにいくつか大きなハシゴがあるが、中盤以降はハシゴはない。しかしながら樹林帯の暑さもあり心身に堪える。木道末端に辿り着きしばらく歩くと美しいアラスカ庭園に出会う。ここで田中君ダウン。少し辛い思いをさせてしまったか…。また長休憩をとり身体を休める。ここから雲ノ平山荘まではまさに楽園。庭園風の草原が広がり、目の前の水晶岳に前日の薬師岳、黒部五郎岳などがよく見える。山荘に着くと田中君は再度おトイレ。下痢っぽいらしい、気の毒。またここでは同志社山岳部のOBさんとやらに出会い、思い出話に花が咲いた。ともかくここからは高天原を目指す。しばらくは平凡な道が続くが、樹林帯に入ってからはかなり大きなハシゴの連続で驚いた。高さは20m近くあろうかというのもあって、渋滞必至であろう。スリップ要注意。その後高天原峠を過ぎてしばらくしたところで休憩していると、不意に電波が繋がり、各自通知確認タイム。ここで親からの連絡を通じて台風の急接近を知り急遽作戦タイムをとる。しばらく相談し、当初予定した黒部五郎岳のピストンをカットし、上高地まで6泊7日の行程に変更した。あとは30分ほど歩いて山荘に到着。
到着後は荷物をデポし、お目当ての温泉にピストンした。山荘から温泉までは歩いて20分ほど、そこそこ歩くのでスリッパは避けたい。温泉はいくつかあるが、我々は左奥からまつの湯をチョイス。湯加減は熱めで疲れ切った身体によく効いた。乳白色の如何にも秘湯という感じでわざわざ降りてきたかいもあるというものだ。そういえば大内は一人で混浴の公開露天風呂に入ってた。おば様方にケツをガッツリ見られていたが、中々逞しいサービス精神を持っているものだ。入浴後は小屋で氷結を頂く。晩飯は筆者のお楽しみとしてそうめんを発動、雨の中で災難だったが体調不良の田中君もこれで元気が出たようで何よりだ。元ワンゲルで現在小学校教諭という方ともワンゲル談議に花が咲き、とても楽しい夜だった。なお小屋は二階の大部屋に雑魚寝スタイル。周りのハイカーに迷惑をかけないよう留意しよう。
<5日目>
5日目は4時起床で小屋前でラーメンを食べて後出発。どうも田中君がよこのじーさんにキレられたらしい(夜の内に準備しとけだのなんだの)。小屋前の湿原は早朝霞がかかっていてとても美しかった。高天原から岩苔乗越の稜線復帰まではひたすら樹林帯が続く。多少荒れた箇所もあるが、おおよそ整った道である。途中の水晶池は今回は涸れてしまっていた。森林限界に近づくと草原になり稜線が見えてくる。最後の稜線復帰手前は沢筋を辿ってザレ場をつめ上がるが、我々は一度一つ北の沢筋に入ってしまった。藪も多少濃く道迷いしやすいので、よく地図読みしたい。岩苔乗越から反対側には黒部川源流の水場があり、5分ほど下れば水を汲める。岩苔乗越から10分ほど東に行くとワリモ北分岐、ここで荷物をデポして水晶岳までピストンする。水晶小屋までは平坦な道が続き、大変快適。また道筋に可愛らしい花が群生していて美しい。小屋からは野口五郎岳から彼方に後立山の山々が望める。小屋からもしばらく平坦な道が続くが、水晶岳に近づくと次第に険しくなる。一ヶ所ハシゴもあり。とはいえ難しい箇所もなく水晶岳着。これまで歩いてきた立山~薬師に雲ノ平と黒部五郎、東には後立山があり彼方には威圧的な槍穂が目に映る。百名山に相応しい大パノラマが広がっていた。山頂はかなり狭いので写真撮影を終えすぐに撤収する。
ワリモ北分岐に戻って荷物を回収、休憩も早々に切り上げ鷲羽岳を目指す。分岐からは鷲羽岳を手前のワリモ岳が隠してしまっている。このワリモ岳の南側は険しい岩場でクサリ場が続くので注意。その後コルまで下って登り返すと鷲羽岳に着く。鷲羽岳頂上はとても広く休憩にちょうどいい。少し南に下ると鷲羽池越しに望む槍ヶ岳が美しい。ここから三俣山荘まではかなりの急坂。膝を傷めないよう気を付けて降る。三俣山荘は多くの登山者で賑わっていた。我々も山荘でトイレをお借りしたが、内装などとても素敵な小屋だった。そういえば田中君がトイレにこもっている間に、ちょくちょく顔を合わせていたおじ様から餞別といって4000円頂いてしまった。いいのかこれは…。
三俣山荘からしばらく歩いて三俣蓮華岳への分岐。折角なので荷物をデポしてピストンする。かなり風も強くガスっぽかったが、写真を撮るときだけ運よく晴れてくれた。その後荷物を回収し、巻き道ルートから双六小屋を目指すが、数十分経ったところで雨が降り始める。始めは通り雨と思っていたがどんどん雨足が強くなりついには土砂降りになる。雨具装着の判断が遅れたことで皆ずぶずぶのまま歩くことになってしまった。道の水はけも悪く靴をずくずくにしたまま一時間ほど歩き何とか双六小屋にたどり着いた。小屋前は宿泊客であふれかえっていてとても雨宿りできる雰囲気ではなく、手続きだけ済ませてテント設営に向かった。皆疲労困憊だったが、しばらくするとさっきまでの雨が噓のように晴れて元気も戻ってきた。この日はテント泊も小屋泊も盛況でとても賑やかだった。学生グループもちらほら見える。ともかく一休みしたのち夕飯を囲んだ。
と、その途中電波を確かめようと小屋前をうろついていると、一年生の田中君から声がかかる。深刻そうに話すのを聞くと、なんと彼がトイレで血尿を出してしまったのだという。聞き覚えの無い言葉に困惑するが、どうもマジらしいので小屋併設の診療所で診てもらうよう指示する。その後筆者も彼と一緒に診療所に行って話を聞いた。そこのお医者さんによると、筋組織が極度の疲労によって壊れ、血中に流入したニオグロビンが腎臓に悪影響を及ぼしているのだという。そして槍ヶ岳~上高地はあきらめ、すぐ下山するよう言い渡された。急な下山決定にメンバーともども動揺が隠せなかったが、大事に至るわけにはいかず全員一致で翌日下山とした。(その後田中君のお母さんと電話したりなどあったが省略。なんとまあ次の日新穂高まで迎えに来てくださったのだからありがたい。)
<6日目>
双六小屋から新穂高までは6時間弱といったところ。日の出と同時くらいに起床し、だらだらと準備をして出発する。この下山路は本当に何も言うことはないが、稜線からの槍穂はとてもカッコよかった。いずれリベンジしようと心に決める。そういえば途中の鏡平山荘でもわさび平小屋でもかき氷があったが、誰も食べなかった。振り返ればもったいない気もする。
昼前には新穂高温泉に到着、真っ先に風呂に入った。今回入った中崎山荘は鍵付きロッカーによる定員制、10分ほど待ったが周りも皆登山者だった。ちなめっちゃ気持ちよかったす。
温泉後は反省会を済ませ、各々帰路に着く。ちなみに新穂高温泉から高山駅まではバス一本で行けました。

【総評】
昨年9日かけて南アルプス縦走を完遂できただけに、今回は悔しさもあり物足りなさも感じる半端な長期縦走となってしまった。やはり縦走を完遂するのに十分な体力を一年生につけられておらず、トレーニングをさせなかった責任は感じざるをえない。
とはいえ縦走中は晴天続きで、反省会でもメンバーは皆楽しくやってくれたと言ってくれた。その意味で、山旅の楽しさを知ろうという一つの目的は達成できたのかもしれない。この楽しさと、また悔しさをかみしめて、後輩たちが来年以降も長期縦走を実施してくれればと願う。



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