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2020 個人山行 秋田駒~乳頭山


個人山行 東北山スキー

文責 小川
日時 山中2020年3月12日~3月15日。
メンバー CL小川、SL宮本
天気 12日晴れ山頂付近雪、13日晴れのち雪、14日曇り時々晴れ、15日曇り時々晴れ
計画 
1日目  アルパこまくさー4:00-八合目小屋―1:30-男女岳山頂―0:30-八合目小屋【6:00】
2日目 八合目小屋▲―2:00―湯森山―3:00―笊森山―2:00―乳頭山―1:00―田代平山荘▲【8:00】 
3日目 田代平小屋▲―1:30―蟹場分岐先1063ピーク手前のコルー1:30―小白森―1:30-大白森―0:45-大白森山荘―1:30-大沢森―2:40-曲崎山―1:45-八瀬森山荘▲【11:10】
4日目  八瀬森山荘▲―4:00-大深岳南市境ポイントー1:30-小畚山―1:30―三ッ石山―0:30-三ッ石山荘▲【7:30】
5日目 三ッ石山荘▲―1:20-大松倉山と犬倉山のコルー3:00-黒倉山―1:30―御苗代湖―2:00-不動平避難小屋▲【7:50】
6日目  不動平避難小屋▲―1:00―岩手山山頂―3:00―焼走り登山口【4:00】
※コースタイムは1日目2日目などは『山スキー百山』『山スキールート212』等の記録を、全装時2倍、アタック装備時1.5倍で計算。コースタイムのない所はこれまでの小川の経験から目分量で割り出した値を採用。

記録コースタイム
1日目 アルパこまくさ(9:15)-3:05-八合目小屋(12:20)▲
2日目 八合目小屋(5:50)-1:50-阿弥陀池小屋ー0:25-男女岳山頂ー0:15-阿弥陀池小屋ー0:45-八合目小屋(9:10)▲
3日目 八合目小屋(6:10)-1:30-湯森山ー1:55-笊森山ー3:25-乳頭山ー1:10-田代平山荘(14:10)▲【8:00】
4日目 田代平山荘(6:15)-0:45-田代平1239丘ー2:35-蟹場温泉分岐ー1:00-蟹場温泉登山口(10:35)

電波 アルパこまくさ◎、八合目避難小屋〇、田代平山荘〇
参考地形図 「秋田駒ヶ岳」

記録等
3月12日
秋田駒や乳頭山へのアプローチには田沢湖駅まで出ている夜行バス羽後交通の「レイク&ポート号」が極めて便利。
田沢湖駅から乳頭温泉行のバスに乗り、アルパこまくさ前で下車。この日アルパこまくさは休館日だったが、9時になるとバス待合室も兼ねているトイレ棟は開放してくれた。
アルパこまくさからはスキー場の緩斜面を延々と登る。スキー場最上部まで行くと茂みに赤テープがあり、そこから5分ほど樹林帯を歩けば雪の県道に出る。県道は橋を渡ったあたりからショートカットルートを採ったりして進んだ。この日はガスと雪で視界は悪かったが、道路から大きく外れなければ問題なく8合目避難小屋まで着ける。
天気の好転を期待しつつ軽く休憩したのち、秋田駒へ向かうもガスと強風に押され案の定撤退。8合目から20分足らずでクトーが不可欠な事が分かる。
小屋で宮本が”何か豪華なもの”としてハンバーグ乗せハヤシライスをふるまってくれた。
翌日の予報は昼以降天候が悪化するということで、コースタイム8時間の田代平山荘までの縦走はなかなか難しいことが分かる。今日の午後の偵察でガスの中の行動への不安は増していた為、本格的な吹雪でなくとも夏の縦走のように安易に突撃命令は下せない。ちょっとでも前進して熊見岩辺りでビバークすることも検討したが、それよりも今日予定していた秋田駒登頂が果たせていないことへの心残りの方が勝ってしまった。縦走の完遂からは遠のくと思ったが、明日の朝の好天の中の秋田駒はさぞ素晴らしいだろう。朝のうちに秋田駒を踏んで再び8合目に帰ることとした。
3月13日
小屋から出ると予想通りの快晴。淡い紺色の空をバックに白い輝きを放つ男女岳を中心とした秋田駒ヶ岳がでんと構え、その上の小さな月と相まって実に美しかった。
今回は最初からクトーをはめて歩いたが、開始30分ほどのクラスとした急斜面をトラバース中,宮本のクトーが破損。カニ歩きで平坦地まで上げて処置したかったが、完全に氷となった斜面にエッジをたてられないようでやむなく急斜面中腹でアイゼン&シートラーゲンに。このクトー使用不能事件は山行の継続可否に響くこととなった。
男女岳直下付近で南からの強風を浴びる。阿弥陀池小屋で背負ってきたスキーを下ろしアイゼン・ピッケルに。この選択は強風の為だが(背中の板は風をよく受け止める)、正直あれほどの傾斜でかつクラストした斜面だと滑っていて全く楽しめないと思ったというのもある。
頂上までは大した距離ではないが、吹き飛ばされるような爆風に何度も耐風姿勢をとったため中々遠く感じた。
山頂からの絶景は言うまでもない。文字通り這ってでも、そして縦走完遂を犠牲にしてでも登る価値はあった。
小屋で板を回収しスキーで帰る。危険性が低いと判断して沢を中心に滑った。
一度小屋に着いて後時間があったので翌日のルート探しも兼ねて探検。と、すぐに雲が出て雪が本降りとなったため引き払った。全く予報通りで驚いた。
3月14日
この日は終日天気は持つ予報。仮に順調に進められれば乳頭山からサブルートを適用して滝の上温泉に下り、ショートカットをすることで岩手山への登頂にチャンスをつなげられるかもと考えていた。が、結果としては天候良好とされていた割に雲が多く苦戦し、今後の天気も疑ってしまった点、想像以上にスピードを出せなかった点などから田代平どまりとなった。
小屋を出て最初のピーク、湯森山までは小屋から東進して直接稜線上から上がった。笹森山経由だと雪崩が怖い。
湯森山からの下降は崩壊地に誘い込まれないようにラインどりに注意した。
おり切ったところで再びシールで歩きだす。天気が良ければさして迷うことはない。笊森山までの登りは長かったがなんとか1ピッチで登頂。ここで初めて乳頭山をよく認識できた。
ところが、山頂からスキーで降りようとした矢先ガスがかかり、休憩中にみた風景と周囲数十メートルの傾斜・起伏から読図をしなければならなくなる。ちょっと進んでは地図を出し、ガスが薄くなっては目を凝らし、を繰り返していると全然進めなかった。こういう時はホワイトアウトナビゲーションがセオリーかもしれないが、それほど太くない尾根上を進まなくてはいけない状況下で、尾根・谷を誤った場合突然急斜面に鉢合わせるという恐怖があった為、コンパスのみに頼ることは到底できなかった。ホワイトアウトナビゲーションは万能ではないと感じた。我々が修行不足なだけでベテランなら別なのかもとは思うが。
下り切ったところ辺りから雲の層から抜けた。乳頭山は間近だった。が、滑走で消耗していた宮本の足は重く、クラストした斜面でシートラアイゼンモードになってしまい余計にきつそうだった。スキーに慣れていないとシール登高よりツボの方が早いと感じてしまいがちだが、両足併せて3、4キロ以上背中が重くなるのは純粋にきついと思う。今回も安易にシートラにさせずにもう少し粘ってもらうのが吉だったかもしれない。
そんあこんなで結構時間はかかったがなんとか登頂。乳頭山上部は下から見ると岩々しているが北側に回り込むとアイゼンピッケルは不要。
流石にこの山は人が多く、山頂付近で何人もの人と会った。下山はそのトレースを参考にしつつ滑り、田代平山荘に到着。今宵の宿とした。
3月15日
残りの日数と天候からして縦走はもはや続けられなかったが、最後のあがきとして少しでも縦走を続けて田代平を経由してから乳頭温泉に下るエスケープルートをとった。
田代平周辺の雪は適度なパウダーで、この山行中忘れかけていた新雪を滑る快感を思い出させてくれた。
田代平以降は案外読図に手間取った。視界は利いているが平坦なブナ林が続くとこれといった決め手に欠けて判断に不安が増すようだった。
純粋に傾斜が極めて緩い(もしくは小ピークの連続でいちいち巻く必要があった)こともあり、地形図上で想定していた通りには中々進めなかった。
ともかくもなんとか正しいルートを選び続け最後は乳頭温泉郷の蟹場温泉直上に滑走!なんやかんやブナの中は前日までのクラストした稜線上よりよほど滑りやすい雪だった。
下山後は昼前から名高い蟹場温泉に浸かり、夜は盛岡で焼肉と冷麺を食べ、と満足のうちに山行を終了した。


コメント
卒業山行として、また4年間の集大成としてスキー縦走がしたいと考えていた。葉玉さん・永喜さんの蓮華も日数が必要でかつ素晴らしいロケーションなので、学生のうちに行っておくにふさわしいいい計画だと思う。先輩の立ててきた計画はいつも自分の模範であり憧れだ。
だが、自分としては「スキーは登る為の道具」という認識の下、スキー縦走に挑戦してみたかった。
いくつか検討はしていたが、クラシックルートとして名高い秋田駒~乳頭を起点に岩手山まで尾根をつないでいくルートを選んだ。
夏に下見をしておいたので土地勘が多少あったことと、雪原、ブナのツリーラン、アイゼンピッケルの岩手山と変化に富んだ雪山を堪能できることが決め手だった。
結果としては、計画していた行程の半分も達成できなかった。いろいろと準備不足も否めないし、勝負をしかける度胸も欠けていたと思う。
とはいえ、ピッケルにアイゼンで苦労して登った秋田駒での絶景や乳頭山までの森林限界上のプチ縦走、田代平の雪原、蟹場温泉までのツリーランなど充分変化に富んだ縦走が出来たし、最後の温泉も良かった。また、自身の読図力や気象を含めた判断力を総合的に駆使した刺激的な山行でもあった。
無事に縦走が出来たのはもちろん自分の力だけではない。一緒に登ってくれた宮本の作る食事や、めげない根気強さにも助けられた。改めて感謝したい。
さて、今回のルートだが、山スキーのルート本には日帰りも頑張れば可能だという。しかし、現役のHWVには流石に厳しいかな。。
記録タイムを見てもらえば分かるが、登りは想定のコースタイム通りに動けているが、下りがやっぱり遅い。
特に笊森山から乳頭山までの稜線は、アイスバーンだったこと、ガスでホワイトアウトしてしまったこともあり、大幅に時間を食った。
だが根本的には、スキー滑走技術の未熟さと、縦走ならではの、トレースのない箇所のルーファイしながらの滑走に対する不慣れさ、があったと思う。
学生は時間があるとはいえ、早く移動できればできるだけたくさんの山を楽しめるし、何より安全につながる。
自分も今後も鍛錬をしていきたいと思ったし、後輩の山スキー班部員も現状に甘んじずスキーの機動力を活かした登山の実現へ向けて努力していって欲しいと思う。
最後に、今回のような春休みを利用したスキー合宿は現状かなり参加者が絞られるということを申し添えておく。
現在のワンゲルでは春合宿と言えば海外バックパッカー旅が定着しており、そこで3週間の予定を空けるとなると、財布的にも、社会的にももう一本合宿に参加することは難しい人が出てくる。もしこの3月のスキー合宿に下級生を積極的に連れて行こうと思ったら前々からメンバーを決め、よくよく話し合う必要があるだろう。






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