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2019年 米子沢


2019年 米子沢遡行
文責 小川
行先 登川水系米子沢(1級上)
日時 9/28(土)
天気 高曇り
水量 普通
メンバー CL:小川(W3)、SL:布勢(W3)、医療:小野(W1)
メンバー構成 布勢のみ米子沢経験あり。小野は日帰り沢×2、沢合宿×1(葛根)を経験済み。
参考遡行図 『東京起点120ルート』
タイム
4:50 威守松小屋発
5:10 最後の堰堤下入渓点
5:25 沢装装着
5:45 発(入渓)
6:15 ナメ沢出合二俣
6:45 ③10m滝下
7:45 17m滝下
8:15 ゴルジュ入口
9:30 ゴルジュ最後の滝上(大ナメ前)
10:50 二俣
11:20 脱渓ポイント
11:45 脱渓ポイント発
12:00 ニセ巻山頂
14:10 威守松小屋着

対処等
~入渓 
桜坂駐車場手前から林道を進む。林道は地形図にも黒線で記載あり。
米子沢に下りるところには「←米子沢」などの看板がある。1度部外記録で写真を見ておくと良いと思う。
というのも、暗い中歩いたためか1度、焦って手前で沢に下りてしまった。布勢が違和感に気が付いてファインプレー。その入渓点にも堰堤は見えていたのだが、沢に下りてすぐの”最後の堰堤”は真ん中が切り取られているのでその形を覚えておくと、たとえ間違えてもすぐ気が付くらしい。
河原に下りた後も10分ほど登山靴で歩いた。今回は水が枯れていた。水が出てきたところで沢装備装着。

2段20mくの字ナメ滝 
巻くように左岸から登る。問題なし。

ナメ沢出合 
右が本流。

3段40m滝 
10×15mとまとめて巻く。出合の中州(?)から巻道が始まっている。入口、復帰点等に赤テープ豊富だった。
トラバースしたり急登があったりと巻きにしては長く不安になるが、踏跡は明瞭なので忠実にたどる。樹林帯だが切り立っていて、踏み外しからの右落ち注意。とはいえエスケープの下降でも用心すれば使えると思う。

9m 
巻き終わりすぐ。巻きを完全に下りずにそのまま滝横の岩上を右岸巻。問題なし。右からも滝があわさり両門の滝ぽくなっている。

③10m
威圧感がある。計画書対処では右壁直登からの現地判断DE後続確保だった。が、どう見ても左の階段状が登りやすそう。とはいえひとまずトップ布勢に右壁を登らせたが、見た目以上に渋いらしく一旦退く。左壁の階段状は増水時はさておき、この日は乾いていてさほどの労なく滝上に出れた。高さがあるがW1でもフリーで登れるレベル。滝上に出るとすぐ8m。そのまま左からの攻略は不可能なので左岸に移る必要があるのだが、このときに落ち口で中々ヒヤリとしたので、登れるのなら右壁直登が正しい対処なのかも。だが、確保が不要な分、左階段状もルートとして全くの間違いではない。
下降時は左岸ブッシュから懸垂一択。

2段ナメ滝
事故が頻発しているらしい。要注意。ナメ滝を越えたところで1休。

栂ノ沢出合~④5m下
特に問題なし。

④5m
今回の核心1つ目。と意気込んでいたら、トップの布勢がおもむろにとりつき、水流中をあっという間に突破してしまった。見事な登りっぷりであっぱれだった。が、ここで使うためのカムもナッツも、サブロープも背負わずに勢いだけで行ってしまった。全く血気盛んな困った奴である。W1には流石に厳しそうだったので滝つぼからサブロープを投げ上げて布勢に託し、肩がらみで小野と自分とをお助けさせた。
対処としてはトップがフリーで水流中を突破し、後続をサブロープで確保するかお助けするというのがやはり正解だろう。滝上には手頃なクラックがあり、カムがあれば確保支点も作成可能。左岸巻きも可能だが、直登した方が圧倒的に早い。エースのクライミング力が試される滝。
下降時だが、5mの数段上に人口支点と新しい残置スリングがあった。これを利用しての懸垂が可能。
なお、その人口支点の脇に沢山の献花がしてあった。恐らくは直後の17m滝か、この5m滝の高巻で滑落されたのではなかろうか。ご冥福をお祈り申し上げるとともに改めて事故の多い沢だと身を引き締められる。

17m滝
左から立派な滝がかかっているが、本流は右の滝。対処は真ん中のリッジを直登でよい。2017安陪PではW1を確保したが、今回は小野の実力を見越して全員フリーで突破した。
小野の勇気と、上級生2人がかりの重厚なサポートでうまくいった。が、後半は傾斜のあるスラブになってくるので、W1には確保なり、お助けロープなり出すべきだったかもしれない。

17m滝上
今年はもう雪渓はなかった。ガレ&ゴーロが続く。

2m、2mCS
問題なし。この上で2回目の休憩。ここからトップCLに交代

多段15m
問題なし。

⑥5m
ゴルジュ入口の滝。日影沢を利用しつつ、右壁にとりつき、落ち口に回り込む。やや高度はあるがホールド、スタンスしっかりしているので慎重に行けば問題なし。
後続6人パーティーは右壁をそのまま登り切って左岸を次の5mも含めて高巻きし、3mほど懸垂下降してゴルジュ内に復帰していた。

5m
左壁直登。問題なし。

2段10m
右からヘツるように登る。水線から上がりすぎないように注意する。

2m(CS)
滝の5m程手前から右岸テラスに攀じ登り、そのままトラバースして滝落ち口にクライムダウン。

2段8m
右壁直登。中々ホールドは脆い方だが、比較的足場はしっかりとある。最後に落ち口方向にトラバースするところが、高度もありやや怖かったが、ここも小野にはフリーで来てもらった。
確保するとしても支点は、右壁をさらに高く登ってブッシュでとるより他はないだろう。

7m滝
今回の核心パート2。2段8mの登り終わりからそのまま進めば自然と巻道に入れる。高度感もあり怖いが、踏跡がしっかりとある為、慎重に歩けばよい。小野は流石に怖そうだった。が、フィックスを張る必要はないだろうし、そもそも張るのは難しいだろう。

2条20m
右壁を登る。威圧的だが、ホールドスタンス良好で割合にチョンボ。登り切った先で3回目の小休止。

2段15m
下段は直登し、上段は右岸奥の凹角内を巻くように登る。

15m
乾いた左壁(草付き)を登る。最後のところで念のため小野にお助けスリングを出した。上部に古いハーケンが打ってあったが、乗越のお助けとしてはさておき、確保支点としての信用は出来そうにない。

大ナメ
水流中が思ったより滑る。左右の岸をよく見て、乾いたところ、少しでも凹凸のある所を探して慎重に進む。
小野はまだ恐々といった感じだったが、調子に乗ってた布勢が滑っていたのに対し1度も大きく滑ってはないようだったので、ナメの歩きに関しては今日一日でだいぶ成長したと思った。

2段6m~2段5m
記録になく対処も特に考えてなかったので、急に出てきてちょっとびっくりした。が、ここまで登って来れたならオンサイトでも問題なし。
対処表には滝があることだけ記しておけば良いだろう。

二俣
右又にはトラロープが張ってある。このあたりの景色が最高であった。

脱渓
二俣から20分ほど歩くと右岸に踏み固められた台地がある。沢からは避難小屋は見えない。また、読図的には避難小屋に通じる枝沢を若干通り過ぎる形になる。今回は大ナメで自分らを抜いていった先述のパーティーがその台地上で沢装を解除していたのでここで脱渓とすぐにわかった。
赤テープのあるところから踏跡をたどり、トトロにでてきそうなブッシュのトンネルを登ると、ハイ、避難小屋と一般登山客。

下山道
個人的には山頂付近で黄葉を堪能できた。登山道はアプローチシューズ可。

リーダーコメント
個人的に、HWVの五十何代目かの部長として、米子に行かずに卒業というのはあまり考えられなかった。現役の時に行かなかったことを後悔したくないということで、半ば無理言って山行実施にこぎつけたのだが、本当に行っておいて良かったと思える沢であり個人的に大変有意義な山行だった。計画作成時にアドバイスを頂いた安陪さん、葉玉さん、ツッコミや装備でサポートしてくれた2年生、在京の方々、そして快く同行を引き受けたくれた唯一の経験者布勢、最後まで弱音を吐かずについてきてくれた小野にまずは感謝を述べたいと思う。
今回の山行は部にとっては、2年前のボロボロの遡行記憶の上書きという意味もあったが、その点でも成功であった。前回の沢中12時間50分から沢中コースタイムが半減できた理由を挙げると、①前回リーダーズからの引き継ぎを受けて、対処でほぼ即時即断だった。②山行時期が前回より1か月遅かった。③W1が沢合宿を経験しておりそれなりの登攀力があった。この3点に集約できるだろう。特に②だが、これには雪渓が消えたということと(2019年も少なくとも初夏は雪渓があったらしい)、人がより多く入渓し踏跡や赤テープの整備が進んだ2点がある。上流部などは、特に、毎年雪に押しつぶされて巻道や脆いホールドがぐちゃぐちゃになっている可能性があり、時期が遅いほど人が入ることで登りやすくなっていく可能性が高い。
③に関してだが、小野君が登れることをいいことにメインロープを結局一回も出さずに終わってしまったので、万が一落ちたらやばいなというところでもう少し積極的にロープを出すべきだったのかもしれないと反省もしている。
2年前の遡行よりは上手くいったことは間違いないが、2012年の佐藤Pはこれと同じくらいのタイムで、しかも6人で、しかも全員米子初で達成している(!)。
ミスはなかったので、正直これ以上どこ(のタイム)を削れば、といった感はある。が、どの沢でも同じかもしれないが、リーダーがどれだけさっと対処を見極められるか、フリーでさくさく突破できるか、初心者が時間をかけずに登れるように整えられるか、この積み重ねにかかっているように思う。その点では自分も布勢も沢のリーダーとしてまだのびしろはあるということだろう。とはいえ、今回の参加メンバーと人数を考えると、これが現在のHWVの標準タイムというには早すぎると言っても差し支えはない。メンバーにもよるが計画作成時に使用する際は1.2倍程度にしておくことをお勧めします。

最後に、米子沢だが、今回のように天候に恵まれていると特に終盤で素晴らしい景色を堪能できる。出てくる滝も4年生にもなるとさほど精神をすり減らすことなく登れ、かなり楽しめるものだった。お手頃な茗溪であることは間違いない。今後も、十分に気を付けつつ、HWVの心の沢として登っていって欲しいものである。



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