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2019年 沢合宿葛根田


沢合宿葛根田

文責 小川
日時 2019年8月25日入山~8月27日下山
行程 滝ノ上温泉~葛根田川遡行~八瀬森山荘~関東森・大深岳~大深山荘~松川温泉
資料 25000分の1「曲崎山」、エアリア「岩手山・八幡平2018」、遡行図『東北・上越の銘渓62選』
  天気 初日・二日目晴れ時々小雨、3日目快晴
水量 1日目やや多し、2日目通常
メンバー CL:小川(W3)、SL:布勢(W3)(二日目以降は中浜)、食当:中浜(W2)、天気:小野(W1)、医療:藤原(W1)
メンバー構成 小川は沢合宿4回目、布勢は3回目、中浜は沢中泊初
コースタイム 
(1日目)滝ノ上登山口休憩所4:20―入渓点着5:10発5:35―大ベコ沢出合7:10―大石沢出合9:25―中ノ又沢出合10:15―葛根田大滝下10:45―滝ノ又沢出合着12:20▲
(2日目)起床4:30―滝ノ又沢出合発6:00―二俣10m滝下6:25―930m二俣7:40―20m大滝下8:50上10:20―10m滝下10:25上11:05―八瀬森山荘着12:00発12:25―大深岳山頂16:00―大深山荘16:35
(3日目)起床4:30―大深山荘発5:40―分岐6:30―松川温泉7:50

記録
〇0日目
国立6:45発で18切符の旅スタート。今年は仙台で40分しか時間がなく駅中の立ち食い蕎麦で昼食。ここのから揚げ蕎麦が意外とイケる。
18:30予定通り雫石駅着。ジャンタクは出てしまっていたのでタクシー2台に分乗して滝ノ上温泉へ向かう。
布勢がOTANOSHIMI1の肉を買いたいということでタクシーでスーパーに寄ってもらった。6370円と6700円だった。ジャンタクは1.5割り増しになっているということか。
滝ノ上温泉の休憩所は事前情報を上回る綺麗さ。中で一晩休ませていただいた。

〇1日目
午後からの天気の崩れを勘案して3:30起床。夜明けとともに入渓を目指す。
と、パッキング中に布勢の雨具忘れが発覚。なーにやってんだか。行動中の雨予報は4日目のみだったのでそのまま行動を開始。
登山届は休憩所の向いにある乳頭山登山口の登山ポストに提出した。ちなみにここの休憩所の時点で電波は入らない。
林道は地熱発電プラントが何カ所も続いた。途中怪しい分岐があったが川沿いの道を選択した(結果的にあっていた)。
林道終点は「第6発電プラント」らへん。舗装が終わり車をターンさせるスペースがある。その先の藪に踏跡のような道が続いていた。藪を漕ぐように5分程進んだがあまりの道の荒れようと、次第に川から離れていく道に不安になってしまった。林道終点付近にあった明瞭な入渓踏跡でよかったんでないか、ということになり、引き返し堰堤の真上で沢装装着。結果的には藪のような踏跡をもう少し辿るのが正解だったようである(後でそのルートを採った入渓者と遭遇)
この沢装装着のタイミングで小野のハーネス忘れが発覚。準備会では確認済だったので部室に忘れて来たのだろう。報告を受けて一瞬思考停止に陥った。が、このまま入渓しないというのはあまりにももったいない。葛根田川の遡行に関しては確保が不要という条件を勘案し、スリングとカラビナで作る簡易ハーネスで対応することとした。事前の情報通り事が運べば、簡易ハーネスさえ不要となろう。仮にエスケープを採用するとして懸垂が必要になる場面もないのである。
小野のハーネス忘れと、苦肉の策たる簡易ハーネスの紹介、確保による突破が前提の大深沢遡行がこの時点で中止となったことをメンバーに伝え、堰堤から入渓した。
水がかなり冷たい。やや増水していたため渡渉はスクラムを組んだりして行った。最初は渡渉を交えた河原歩きが延々と続く。
何か所かヘツリや巻きで苦労したところもあったが、全てオンサイトで対応可能だった。
肝心のお函だが、増水の為かさほど感動スポットではなかった。が確かに此処は奇形なり。写真では恐らく伝わらないので一辺見てみて欲しい。
中ノ又沢出合では出合直前の右岸の台地にビバーク適地を発見できた。あまりに整地されているので4人テント一張りはいけそう。台地上なのでちょっと増水しても心配はなさげ。
葛根田大滝は2段の堂々たる直瀑。1段目の釜の前で記念撮影。巻道は1段目脇を左岸から。土が滑りやすいので途中PRをだす。上級生なら草木を掴みつつお助けなしで問題ないレベル。登った後のトラバース、沢床への復帰は踏跡濃厚で、危険も少なく問題なし。復帰のクライムダウンではやや頼りないが残置ロープも使えた。
沢は河原状に戻り、暫く進むと滝ノ又沢出合に到着。出合には3カ所台地があり、どこも石を除けたり草を刈ったりすれば充分ビバークは可能。が、最も人跡濃厚で快適そうなポイントは出合直前の左岸だろう。立ち木を使えばツエルト設営は問題なし。PRを使用して縦列に3つ立てられた。
この夜の焚火やOTANOSHIMIが豪華だったのだが、詳細はブログに譲る。

〇2日目
4:30起床。布勢が腹を壊しマルタイを食べれず。中浜も食べたマルタイを戻してしまう。主力格二人が不調とあって出発も大幅に遅れが生じた。
布勢が厳しい状況だったので、とりあえずまだましな中浜にロープを渡してSLを交代させた。以後二つの滝でCLがトップになった以外は中浜をトップとした。
二俣の左10m滝は左壁を問題なし。
暫く倒木や土砂崩れの跡が多い箇所を進む。
急に平坦な地形となり、沢が蛇行を繰り返す箇所に出る。分岐や合流も多いが、常に本流筋を歩けば問題ない。平坦地形の終わりに930分岐。右。
ここから一気に沢は狭くなる。スラブや小釜、次々変化する岩色が目を愉しませてくれる。
核心15m滝。やや遠くからも目に入ってくる。対処としては右岸巻き。巻きの序盤は踏跡もあり、容易に上がれる。が、1段上がると、そこが支沢との間に出来た尾根の上だと気が付く。支沢と本流の間は30~40mほどか。その間は崖状で逃げるように巻けないようになっていた。仕方がないので尾根上の安全地帯にザックを置き、最も簡単そうな岩崖をトップが空身フリーで直登してPRで手がかりを作った。荷揚げの後、後続はゴボウで突破。その岩崖の難所を抜ければ、残りは急こう配でかなり強引とはいえ草木を掴んで登れる為、比較的楽に。15m滝より上に来たかなと思う箇所でトラバースし、本流直上に移動する。藪で下が見えなかったため、トップの自分は念のため懸垂したが、沢床まで7mほどで、沢床も極めて平坦。藪も掴んで降りられそうだったので後続はクライムダウンさせた。踏跡が岩崖以降なく、時間もかかった為、正しい右岸巻きだったのかは定かではないが、落ち口から5mに復帰できているので間違いでもなかっただろう。
直ぐに10m滝。こちらは遡行図記載なし。左岸、というか右壁を直登。こちらもトップフリーで突破しPRを後続に出した。高度があるのでやや怖い。PRの支点は細めの木(シャクナゲ?)を束ねたもの。登った先は増水時の支流なので登り切ったのち本流に復帰。
その後、忠実に読図。沢が枯れたなと思ってさらに暫く詰めていると急に視界が開け湿原に出る。コンパスの北に進路をとって、沼地を避けるように進めば右手の森の中に八瀬森山荘の茶色い屋根を発見できた。
山荘で今後の方針を話し合った。が、長考の末、やはりここで再度の入渓を断念し、E2を採用することに決定した。また、翌々日等への希望をつなぐため、今日中に大深山荘を目指すことに。布勢のトイレのみ利用し早々に八瀬森山荘を後にした。ちなみにここに電波は届かない。(SB,docomo)
エアリアによれば3時間半で楽勝かと思っていた。が、甘かった。道自体はしっかりついているが、藪が覆っており藪漕ぎを強いられる。おまけに倒木も多くいちいち足止めを食らう。よほど飛ばして歩かないと、布勢と中浜の体調不良がなくともコースタイム通りには到底歩けない道である。
大深山荘は実に管理の行き届いたきれいな小屋であった。水場は歩いて片道5分以上かかるが、整備はされている。そして電波が入る。しかもバリ3である。とにかく快適な小屋であった。

〇三日目
朝一で下山して松川温泉を目指す。昨日の登山道よりはよほど状態が良く、布勢の体調も少し回復したためコースタイム通りに歩けた。
8時の日帰り入浴受付と同時に松川温泉峡雲荘に入る。600円也。内湯も露天も最高。シャワーないのには注意。
旅館のロビーで反省会して解散。お疲れ様。



総評・コメント
まず、今回の自分の判断に関して述べたい。ポイントは2カ所。小野のハーネス忘れが発覚した入渓直前と、八瀬森山荘で引き続き遡行を継続するか悩んだ2ヵ所である。
判断を下した自分としてはどちらも最善手であったと思っているし、メンバーも理解してくれていることと思う。
だが、判例を重視して判断をするリーダーに、この記録のせいでハーネスが無くとも沢に入っても大丈夫という安易な自信を与えてしまうことを大変危惧している。
今回の入渓が例外であり、どのような条件でこのように判断したのかを記しておきたい。
私見だが、登山の安全を左右する要素は5つある。天候、地形、装備、技術および知識、身体状態、である。基本的にはこの5つのうちどれか一つが欠けても、他の要素がカヴァーすることで安全に帰還できるよう計画は設定されている。例えば多少の雨が降った際、天候は損なわれているが雨具という装備と濡れた岩の上も滑らずに歩ける技術等で十分に行動継続は可能となる。山スキーなどでルート取りが未熟で楽に進めなかったとしても若者特有のバカ体力で乗り切る、などである。
同様に、今回の隊員内の雨具とハーネスの欠損は、向こう3日間の良好な天候、計画通り進めば確保の不要なルート、簡易ハーネスという知識、遡行に対する本人の意志と十分な健康状態の4つの他の要素で十分に補えると考えた。逆に言うとこの残りの4つの条件のうちどれか一つでも欠けた場合は続行を止めるべきであると考えた。2つの要素が欠けた状況は経験上他の要素をもってしても塞ぐことは難しい。そのため、「地形」で確保が不可欠なナイアガラの滝を擁する大深沢の遡行は諦めざるを得なかったのである。
八瀬森山荘で悩んだのは、そのナイアガラの滝が問題なら、ナイアガラの滝下までは前進し、元来た道をエスケープという選択肢もとりえると考えたためだった。
しかし、八瀬森山荘の時点で衰弱していたSLに十分な体調はなさそうであった。また、大深沢に関しては記録も少なく知識のめんでも不安があった。
3要素で不安が残る現状を鑑み、私は八瀬森山荘からの撤退を決めた。
今回のハーネス忘れにはとりわけ簡易ハーネスという代替措置をとれるだけの知識と、簡単なルートという2条件が功を奏した。CLであるじぶん自分に、大抵の緊急事態でも慌てず対処できるという自信があったことも続行を後押しした。今回の山行記録を読んでいる方には実際の山行時に上記の5つの要件のうち現状いくつが満たされているか、また今後欠ける可能性がどれだけあるかを考えつつ慎重に判断を下していただきたいと思う。

さて、南八幡平は自然豊かで動植物も多く、火山性の為岩石も丹沢奥多摩で見ることのないものばかりで、大変良い所であった。葛根田はさほど危険箇所もなく、沢登りの楽しさやきわどさが手ごろに詰まった沢だと思う。ここ近年で2回連続で大深沢に突入できなかったのは至極残念だが、いずれ後輩に探検していただきたいと思った。
前夜のバイト、大事な道具の忘れものなど、沢合宿への覚悟が足りないそぶりも見受けられた為反省会ではその点叱責したが、こんな初級の沢であっても楽しむためにはそれなりの努力が必要である点は忘れてはならない。もっと努力を重ねればもっといい景色が拝めるので、現状に満足せずにもっと上を向いて頑張ってほしいなと切に願う。




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