文責:安陪山域:魚野川水系万太郎谷本谷
参考資料:遡行図「東京起点沢登りルート120」、25000分の1地形図「茂倉岳」、山と高原地図「谷川岳」2018年版
日程:2018年7月25日(水)~26日(木)
目的:CLの4年間の集大成。上級生の経験値アップ。
天気:1日目は晴れ。2日目は新潟県側は曇り時々晴れ、群馬県側は霧。
メンバー:CL・気象:安陪(W3・4年) SL・医療:永喜(W3・5年) 食当:小川(W3・3年) トップはCL、ラストはSL。
コースタイム(休憩時間などを含む)
1日目
土樽(4:45) -0:50- 入渓点(5:35〜6:05) -0:55- 魚止め滝下(7:00) -0:20- 関越トンネル換気口下(7:20) -0:20- オキドキョウのトロ下(7:40) -0:20- オキドキョウのトロ上(8:00) -1:40- 井戸の小屋沢後のゴルジュ最後の滝上(9:40) -1:50- 一ノ滝下(11:30〜11:50) -1:30- 一ノ滝上(13:20) -1:10- ▲(14:30)
沢中:8:25 沢外:1:20 合計:9:45
2日目
▲(5:40) -0:30- 三ノ滝下段下(6:10) -2:40- 三ノ滝下段上・リードと確保終了(8:50) -2:50- 三ノ滝上段上(11:40) -3:10- 肩の小屋(14:50) -1:50- 谷川岳ロープウェイ乗り場(16:40)
沢中:9:10 沢外:1:50 合計:11:00
対処(対応する写真は説明の下で、全て今回の山行で撮影したもの。対処については2017年の記録も参照のこと)
土樽駅
自動販売機と飲み物用のゴミ箱あり。トイレはボットン型。一般ゴミのゴミ箱はないので注意。
①入渓点
今回は水量が少なく、堰堤の水の流れているところを越えられた。
これくらいの水量なら少ない。
2番目の堰堤。2017年の時はこの写真では水が流れていない人工の階段状のところも水が流れていた。

2017年の時と違い水量が少ないので、快適に歩ける。
②ナメ地帯
問題なし。傾斜もほとんどなく快適に歩ける。

魚止め滝4m(遡行図に記載なし)
滝右岸のルンゼ(岩溝)を登る。ルンゼに上がる際に泳いで取り付く必要があるが、水量が少ないためか簡単に上に上がれた。そのまま岩を登り超える。
トップがいるのが滝右岸のルンゼ。このままトップが手をかけている岩を登り越える。
オキドキョウノトロ手前の滝(遡行図に記載なし)
左岸を巻くように登る。水流右の右壁も登れそうな気がするが、釜に落ちる可能性があるので無理しない方がよい。
③オキドキョウのトロ入り口は右岸をへつってから少し泳いで左岸に渡る。水量が少なければ左岸のスタンスが見えているので全く問題ない。中間部は河原状になっていた。出口の滝には泳いで取り付き、滝の左壁を登る。泳いだり滝のしぶきを浴びたりするので晴れていても体温低下には注意。

右岸のへつり。
荷物が大きいと泳ぎはそれなりに大変。
トップが足をかけているのが泳ぎ渡った後の左岸。見ての通り水量が少なければ水中のスタンスが見えているので簡単に上がれる。
オキドキョウノトロ中間部。奥に見えているのが出口の滝。
出口の滝下からの写真。シャワークライムになるのでかなり寒い。最後はこの写真で滝が流れ落ちているところの左壁を登る。
井戸小屋沢出合後のゴルジュ最後の滝
井戸小屋沢出合後のゴルジュは正直どこからどこまでなのかが不明。ゴルジュらしいものは最後の滝と思われる滝以外はない。最後の滝は直登は厳しそうに見えたので、遡行図にある左岸巻道を探しにトップ(安陪)が左岸から入る涸れ沢を登ったが、上に行っても巻道らしきものは見つからず、ゴルジュのため上がり過ぎるのは危険と判断してクライムダウン。その後巻きはやめて永喜さんが滝を直登。ルートは左岸をへつって右壁を登り、最後は滝上にトラバース。トラバースが厳しく、クライミング能力は必要。トラバースした岩の後ろに残置支点があり、そこにスリングを掛けて後続を登らせる。
井戸小屋沢出合後のゴルジュ最後の滝と思われる滝。写真は最後のトラバースの場面。
井戸小屋沢出合後のゴルジュ最後の滝から一ノ滝まで幅の広いナメ滝が連続する。直登が難しいものは巻くような形になるので、対処にそれなりの時間を要する。

④一ノ滝25m
左岸を高巻き。思っていた通りスケールの大きな滝で、登るとすればリードになるが、2018年現在のHWVの力では到底難しいように見えた。巻きのルートとして計画書段階で滝に近い左岸リッジと少し離れた左岸ルンゼ(枝沢)の二つの可能性があったが、高巻きし過ぎるのは良くないので滝に近い方から巻いた方が良いという方針に決まり左岸リッジから巻いた。しかし、始めは踏み跡らしきものがあったものの徐々に見失い、結果危険な高巻きに。藪を漕ぎ、手で掴んでいる立ち木が折れれば終わりの様な状況になってしまった。藪が深く一ノ滝が目視できなかったので、トップ(安陪)としては自分達がどのあたりを進んでいるのか分からないという精神的にも追い詰められた状況だった。ただそこで、後続の小川、永喜さんからどんどん高度を上げてしまっているので多少危険でも高度を下げた方が良いというアドバイスをもらい、意図的に高度を下げた。その結果、本来の踏み跡を見つけて何とかそこまで降りることができ、そこからは踏み跡を辿って一ノ滝のすぐ上に出ることができた。正しい巻道は確認できたところからは黄土色の地面が露出した明瞭な巻道になっており、一ノ滝が近くに目視できるような距離にあるので、高度を上げないように注意しながら踏み跡を見つける必要があるだろう。左岸ルンゼ(枝沢)からの巻道に関しては確認していないが、踏み跡がまだ確認できていた始めの方で左岸ルンゼ側から踏み跡らしきものが繋がっていたので、結局は合流するのではないかと思った。一ノ滝上の立ち木に関しては支点として信頼できそうなものはない。もし懸垂下降するとすれば捨て縄で何本かまとめて使うことになるだろう。また50mロープ1本で懸垂するのは足りないと思われるので、2本を連結して行う必要があると思われる。
一ノ滝と今回のメンバー。左から小川、安陪、永喜。ちなみにカメラは自動撮影なので4人目がいるわけではない。
一ノ滝を遠くから。
右壁の写真。
今回巻きで登った左岸リッジ状。
正しい巻道から一ノ滝を撮った写真。滝と正しい巻道の距離はこれくらい。
正しい巻道を途中から。前の藪を越えれば一ノ滝上に出れる。

⑤二ノ滝10m
左岸の階段状を上がる。難しい滝ではないが、高度があり基本はフリーで登ることになると思うので、慎重にルートを決めながら登ること。
⑥ビバークポイント
右岸高台に4人程度が寝れるちょうど良いスペースがある。そこでツェルトをタープ状に張ってその下に3人寝た。ツェルトを張るための立ち木はあるが、使えるのはツェルト1つ分なので2つ以上張る場合はポールが必要だと思う。2日目にそれより上流の左岸にもう1つ適地を見つけたが、右岸高台の方がよい。それら以外には見つからなかったので適地はかなり限られている。早めに入渓して右岸高台のポイントを確保するのがよい。
右岸高台の適地。
ツェルトをタープ状に張った。
焚き火もできる。当然のことながら焚き火をする場合は山火事にならないよう気を付け、火の後始末をきちんとすること。
右岸高台より上流にある左岸の適地。できれば右岸高台の方を確保したい。
⑦三ノ滝
高台から全体を撮った写真。下段と上段で滝の流れる向きが異なる。
三ノ滝下段15m
リード。水流右の垂直な壁を登るルートと右奥の草付きクラックを登るルートの二つがあるが、今回は右奥の草付きクラックを登るルートを選択。ビレイヤー用のアンカーは残置ハーケンが2つ。一段上がって小さめのテラスに上がり、そこから左にトラバース、そこから三の滝下段上の広いテラスに向かって登っていく。残置の中間支点は確認できたもので3つあり、小さなテラスに上がってすぐに一つ、左にトラバースした先に一つ、そこから上に少し登ったところに一つある。他にカムで一つ中間支点を取った。クライマー用の確保支点としては三の滝下段上の広いテラスの右側の小高くなっている岩場の上部に3つほど残置ハーケンがある。岩の後ろに打ち込まれている形なのでよく探すこと。立ち木は小高い岩場の上にいくつか生えているがどれも細い木なので、支点としては不向きだと思われる。他のパーティーがいない時は広いテラスにザックを置いて、確保支点を探せばよい。難易度としては最後の残置の中間支点を取った辺りから上に登って行くのが難しく、大きくランナウトするため危険になる。足の置き方が特に大事だと感じた。それなりの登攀経験を積んでおく必要がある。
ビレイヤー用のアンカー。
登り始め。
小さなテラスに上がる。

最後の中間支点を取ってからの登り。大きくランナウトすることになる。

確保の様子。

三ノ滝上段20m
左岸から入っているクラック状の枝沢を登り、途中で三ノ滝上段左岸のブッシュに入り、巻くような形で滝上の落ち口に出る。ブッシュに入るまではリード、あとはフリーで行く。ビレイヤー用の確保支点は残置を探したが見つからず、ハーケンを打ったがうまく打ち込まなかったため、確保支点なしで登った(仮に落下しても広いテラスより下に落ちることはまずないと思われるため、この場合は問題ないと思われる)。残置ハーケンは3つ、いずれも中間支点として利用した。難易度としては三ノ滝下段より下がるが、岩がぬめっているのと、見た目以上に高度があるので慎重に登っていく必要がある。また登り過ぎないことに注意。今回は傾斜が緩くなる安定したところからブッシュに入るのだと思い込んで登り過ぎてしまいロープが足らなくなり、不安定な立ち木で後続を確保。後続に確保のままブッシュの巻道を探させることになってしまった。巻きに関しては明瞭な巻道を見つけることは出来なかったが、三ノ滝上段の落ち口の位置を意識しながらルートを取ることできちんと落ち口から少し進んだ場所に降りることが出来た。
枝沢を登る。

かなり高さがあるため、意思疎通の方法は事前に決めておく必要があるだろう。

三の滝〜ツメ
特に難しい滝はない。分岐がいくつかあるが、地形図通り右の沢を進んで行く。三俣になっているところは一番右に入る。
ツメ
岩登りから藪漕ぎになる。踏み跡は必ずしも明瞭ではないが、しっかり先を見ていればルートを見失うことはないはず。進行方向右に大きな稜線が見えてきたら正しいルート。段々とその稜線に近づいていき、最後は肩ノ小屋少し下の登山道(稜線上)に出る。
天神尾根(肩ノ小屋・トマノ耳~谷川岳ロープウェイ乗り場)
肩ノ小屋からトマノ耳は5分もかからない。帰りはロープウェイの終発に間に合わせるため急いで下山した。天神尾根の下りはロープウェイ乗り場に近づくにつれてなだらかになるが、始めは急峻なので気を付ける。登山靴必須。
トマノ耳にて。
電波情報(docomo)
土樽駅:あり 入渓点:微妙(入ったり入らなかったりするので土樽駅で入渓連絡しておくのが無難) 関越トンネル換気口下:圏外 オキドキョウノトロ上:圏外
ビバークポイント:圏外 三ノ滝下:圏外 肩ノ小屋:あり
基本的に沢中は入らない。
総評
へつり・泳ぎ・登攀・藪漕ぎ・登頂と沢登りの魅力が詰まった沢。危ない場面もあり、自分の実力がこの沢に達しているかは分からないが、ツメから谷川連峰の稜線を望んだ時は大きな喜びを感じた。今回は一週間くらい前から猛暑で雨はほとんど降っておらず、日程中に雨予報もなかったのでほぼベストといってよい条件だった。2017年は水量が多く途中撤退となったが、改めて水量の多寡が沢の難易度に与える影響の大きさを感じた。下降に関しては一ノ滝の懸垂下降など実際にできるのか疑問に思う箇所もあるので、雨予報などでの入山は避けた方がよい。メンバー要件は今回水量が少ない中で最後まで遡行してみてもW1の参加は厳しいだろうと感じた。経験を積み、しっかりとした計画を立てた上で山行に臨んで欲しい。