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2017 米子沢遡行


文責:安陪 一部葉玉
山域:魚野川水系登川米子沢
参考資料:遡行図「東京起点沢登りルート120」、25000分の1地形図「巻機山」、山と高原地図「越後三山・巻機」2016年版
日程:2017年8月21日(月)、行動中に日没・雷雨のため巻機山避難小屋に宿泊したので実際は8月21日~8月22日(火)の1泊2日
目的:最近行っていなかった米子沢の状況確認、記録作り
天気:21日:序盤~中盤は晴れ、終盤は曇り、ツメの辺りから雷雨 22日:曇り
メンバー:CL:安陪(W3) 、SL:葉玉(W3) 、医療:布勢(W1) 、無職(4年生):永喜(W3)

コースタイム
1日目
威守松小屋(4:50)-0:30-入渓点(5:20~5:45)-0:45-2段20mくの字ナメ滝下(6:30)-0:15-ナメ沢出合(6:45~6:55)-0:35-3段40m大滝上(7:30)-1:30-④5m下(9:00)-1:30-17m上(10:30)-1:00-⑥5m下(11:30)-1:10-2段10m上(12:40)-0:10-2段8m下(12:50)-2:25-⑦7m上(15:15)-3:20-巻機避難小屋(18:35)
2日目
巻機避難小屋(4:50)-3:20-威守松小屋(8:10)
沢中:12:50 沢外:4:15 全体:17:05(休憩時間を含む)

対処
入渓まで
前日に威守松小屋泊。20:00から車を借りて途中で夕飯を食べたりしていたら到着が深夜1:00になってしまった。米子に行く場合は18:00くらいから車を借りるべき。朝は4:00に起床。インスタント麺を食べて4:50に出発。桜坂駐車場はいくつか駐車スペースがあるが、巻機登山口まで行ってしまうと行き過ぎで、手前にある上の駐車スペースに向かう道をそのまま上がっていくと入渓点に着く。登山ポストは桜坂駐車場に入ってすぐの所にある。

①入渓点
最後の堰堤から入渓。水量はかなり少ない。ただ普段であると水が流れていないということなので、今回の様に流れている場合は水量が多めということになるらしい。

2段20mくの字ナメ滝
始めは左岸を巻くようにして登り滝の右壁に出る。そのまま右壁を登る。右壁には枝沢が流れていてヌメヌメしていたので慎重を要した。ただ慎重に登りさえすれば登攀自体は難しくない。

②3段40m大滝
右岸巻き。ナメ沢と本流の間のブッシュから右岸巻きに入る。巻き始めに赤テープあり。手前の10×15mもまとめて巻く事になる。巻きの序盤は普通の巻きという感じ。しかし間もなく道が細く脆くなり、本流側もかなり切り立ってるので危ない巻きになる。ここを突破すると中盤の巻き、これはかなり急な登り。終盤は滝上に出るためのトラバース。滝上にはロープを使わなくても降りられる。この巻きで一番慎重を要するのは序盤と中盤の間の道が細くなるところ。残りの部分も決して楽ではないが登る分には行ける。但し、計画段階では下降時ここをクライムダウンの対処にしていたが、この巻きを下降するのはかなり厳しいと思った。立ち木を注視していなかったのでよく分からないが懸垂下降も大変だろう。かといって本流の方を懸垂下降するのも、良さそうな立ち木が見当たらないし滝も相当大きいため、難しいと思った。

大滝後すぐの滝(遡行図に記載なし)
大滝の上は二つの滝があり二俣なのかと思ってしまうが、上に行けば本流が二つに分かれて大滝の前で合流しているのだと分かる。従ってどちらの滝を登っても大丈夫だが、左の滝は難しそうだったので、右の滝の左岸リッジ状を登った。途中で対岸に渡り右岸を登る。渡る時が少し怖い。

9m
右壁も左の階段状も登れるとの事だったが、左は濡れそうだったので右壁をまず登ろうとした。しかし右壁は一段一段が高く登り辛かったので断念。結局、左の階段状登った。こちらは少し水に濡れるが慎重に行けば問題ない。

③10m~④5m下
この間は滝の同定をせずにどんどん進んだが特に問題は無かった。③10mは確保の予定だったが、そもそもどれが③10mなのか分からないまま④5m下まで来てしまった。

④5m
左岸高巻き。この滝は遡行図にはロープ使用で左を登るとあるが、遡行図以外には対処が見当たらなかったので恐らく大丈夫なのだろうと思っていた。しかし実際に行ってみるとロープなしではとても登れる滝ではなかった。まず直登は無理、遡行図の対処である左壁には残置支点が一つありフリーでは厳しい。ここで初めてロープ使用というのは後続確保ということではなくリードで登るということだと分かった。永喜さんは左壁を登りたい様子だったが今回はハーケンもハンマーも持って来ておらず、時間的にも⑥5m下に10:30までに着くというリミットが迫っていたので巻き道を探すことにした。右岸は切り立っていてとても巻けそうになかったので左岸を巻く。茂みが濃かったが何となく踏み跡らしきものはあった。余り高巻きになり過ぎないように進んで茂みから抜けると次の17m滝のかなり近くまで来ていた。ここからそのまま17mの左岸から流入している枯れ沢のガレ場をトラバースして17m滝の下部にクライムダウンで降りた。2012年佐藤Pの記録にはこの滝の対処が無かったが、山行後にこの時の写真を見てみると遡行図の対処通り左壁をリードしている様だった。ここは巻き道がしっかりしている滝ではないので、やはり左壁をリードして後続確保というのが正しい対処だろう。

17m
右岸からは支流が左岸からは枯れ沢が流入しており本流の17mを合わせると三俣の様になっている。右の乾いた所を登るとの事だったが、水流の左壁がホールド・スタンスともに豊富そうだったので左壁を登ることにした。しかし登ってみると確実なホールドが少なく、低い滝であれば思い切って行ける所も高い滝のため足がなかなか出せない。何とか登り切ったがかなり恐怖を感じた。永喜さんもフリーで登ったがW1(布勢)は厳しいだろうと考え確保することに。支点は立ち木が無かったので大きい岩にパワーロープをかけて支点にした。確保されていれば難しくはないだろう。ラストの葉玉はフリー。右の乾いた所を登るという対処についてはどこの事を言っているのか分からなかったが、水流の右は茂みになっており巻き道のようなものが見えた。対処はこっちの方を登れということなのかも知れない。

17m上のスノーブリッジ
17mを登ってみると先にかなり巨大なスノーブリッジがあって驚いた。そういえば水量がそこまで多くないのに水が濁っているのを不審に思っていたが、このせいだったのかと合点がいった。スノーブリッジは沢いっぱいに広がっていて、右岸側は既に崩落していくつかの氷塊が重なり合っており、左岸側はまだ崩落しておらず氷の壁が奥まで続いていた。自分はこうした経験が皆無のためかなり動揺したが、葉玉いわく崩落している右岸側は慎重に行けば大丈夫ということなので葉玉にトップを代わってもらい進むことにした。スノーブリッジは下が空洞になっている可能性があるのでそれに注意しながら慎重に進む。幸い奥には続いておらず20分くらいで突破できた。また17m上の段階で10:30を過ぎており、⑥5m下に10:30までというリミットに間に合わないことが分かったが、計画段階で下降できるだろうと踏んでいた3段40m大滝の下降が実際に登ってみてかなり厳しいという判断になったため、リミットを過ぎているが遡行を続けることに決めた。

多段15m
右の乾いた所を登る。特に問題なし。

⑥5m
右壁を登り落ち口へトラバースする予定だったが、トラバースが出来ずにそのまま左岸高巻きになった。茂みが濃くゴルジュの為なかなか沢に戻れなかったが、何とか茂みを抜けて立ち木支点で懸垂下降。2段10mの上の沢が平坦になっている場所に降りた。よって⑥5mだけでなくその上の5mと2段10mもまとめて巻いたことになる。降りてから左岸を見てみると、先の方は茂みが無くなって更に急な崖になっていたので、ここで降りておかなければ危なかった。ゴルジュの高巻きは危険が伴うので、やはり⑥5mは落ち口へのトラバースを何とかしてするべきだろう。

2m(2mCS)
直登は厳しいので右岸を登る。落ち口は右岸より低いので戻る時にクライムダウンになる。特に問題なし。その後すぐに小さな滝があり、滝上に乗り上げるのが少し辛いが、高さはないので問題なく登れる。

2段8m
乾いた右壁を登るという対処で特に問題はないということだったが、登ってみると経年劣化なのかホールド・スタンスがかなり脆くなっており、草付きを踏むとそのまま土ごと下に落ちたり、登る際に重要になると思われる岩にクラックが入って動いたりしていた。落石もかなり多かった。自分(安陪)はフリーでは登れなかったが、葉玉が登れたのでそのまま行って確保してもらう事にした。しかし、右壁の上は安定しておらずそのまま次の⑦7mの巻きに連なる急な左岸である。ここの支点等の情報に関したは下の葉玉追記を参照のこと。恐らくロープが垂れてくるまでに30分近く掛かっていただろう。まず布勢が確保で登り次に永喜さんがフリー、最後に安陪が確保で登った。葉玉がビレーしている所まで行くと懸垂下降で次の7mの巻き道まで降りてこなくてはならないので、7mの巻き道にある草付きを束ねて支点を作りそこで確保を終了した。葉玉は確保終了後に懸垂下降で7mの巻き始めまで降りた。この滝は計画段階では全く問題にしていなかったが、結果としては今山行の中で一番時間が掛かった滝だった。山行後に他のパーティーの写真を見てみると、右壁を登った後そのまま上に行かずトラバースして落ち口に出ている様だった。確かにどの記録にも2段8mを登った先がそのまま7mの巻きに繋がっているとは書いてないので、こちらが正しいルートなのだろう。確認はしていないが2段8mの落ち口から7mの巻き道が始まっており、今回はその途中に登り着いたのだと思われる。落ち口へトラバースするルートを取ったとしても登攀の難しさは余り変わらないと思われるが、今回の様に右壁をそのまま上がってしまう方がもっと大変だと思うので、落ち口へ出た方が良いだろう。安全を考えるならリードも考慮に入れた方が良い。落ち口に出る場合は切り立ったゴルジュで立ち木は無いので、確保支点を作るためのハーケンとハンマーは必要になると思われる。

葉玉追記
右壁は途中のテラスまで岩の草付きだが、テラスより上部は泥の草付きとなっている。上記の7mの巻きにつながるルートをとる場合は泥の草付きに入る前に左にトラバースするが、ハーケンが無い場合は確保支点が泥の草付き上部の立木しかないため、今回は葉玉が立木までフリーで直登し、後続を確保した。泥の草付きは滑りやすく、滑ったらそのまま滝下まで落ちかねないので慎重に登攀する必要がある。幸いブッシュ自体はそこそこ強かったので上級生ならばブッシュを掴んでの登攀が可能である。立木には単体で支点にするには多少細めの枝が5,6本生えていたので、枝3本と2本で1つの流動分散をとった。立木周辺は立木自身の枝や周囲のブッシュで作業しにくいので、確保者は事前にメインロープを外付けしておくことをオススメする。同様の理由でATCは支点のカラビナに直接かけるのではなく、1m程離れた場所でスリングにかけるのがビレイしやすいだろう。また、懸垂下降時は枝の向いている方向に注意する必要がある。この立木は「へ」を上下反転させたような雪国特有の形をしており、滝下に向かって伸びている。なので、滝下に懸垂下降する場合は捨て縄で力のかかる方向を上手く調節しないとロープが枝からすっぽぬける。今回は立木よりも上流側に懸垂下降したのであまり問題にはならなかったが、沢下降の際は気を付ける必要がある。

⑦7m
米子沢の核心と思われる滝。左岸巻き。つっぱりで直登も出来るらしいが普通の人ではまず無理だろう。どちらにせよ今回は前の滝を登った先がそのまま巻きの途中になっていたので巻くしかない。2012年佐藤Pの記録には巻きは案外チョンボと書いてあったが、ちょっと信じられない。巻き道は両足で何とか立てる位の細さでスタンスはしっかりしているがホールドは草付きしかない。特に岩が張り出している所は岩に寄りかかるようにして超えるしかなく、高度としても一番下との距離がある場所なので最注意を要する。今回は巻きの途中に出てしまったので支点を作るのが難しかったが、2段8mの落ち口に出れたならそこと7mの上で支点を作ってフィックスを張るのも一つの手だと思う。

2条20m
右壁を登る。2段8mのことがあったので、こちらも油断できぬと永喜さんにトップをお願いしたが、こちらは今のところホールド・スタンスともにしっかりしていて難なく登れた。

⑧2段15m
下段は直登。上段は右岸奥の凹角(枝沢)の左壁を登り最後は凹角の上に生えている立ち木を頼りにして凹角を渡り滝上に出る。W1用に立ち木から120スリングを垂らした。

15m
乾いた左壁を登る。途中ホールドが微妙な所でスリングとパワーロープを一回ずつ出したと思う。

⑨大ナメ
米子沢のハイライトということだが、ここまで来るのにかなり疲れており時間もないので綺麗と思える余裕は無かった。ナメは延々と続いており、ナメの経験が浅い自分としてはかなり怖かった。出来るだけ水流は避けようと草付きの岸近くを登っていたところヌメヌメした所で足を滑らせて滑落、幸い5m程の落下で助かったがナメの恐ろしさを改めて感じた。滑らないためにどうしろというアドバイスは自分には出来ないが、自然が人間のために安全なルートを用意してくれている訳ではないということだけは肝に銘じておくべきだろう。

⑩二俣
左を行く。右俣にはトラロープが張ってあるので、トラロープが無くならない限り間違えることはないだろう。

⑪ツメ
この頃にはもう空が暗くなっており霧も出始めて次第に雨になった。雷も光り出したのでかなり焦って急いだが、避難小屋に出るための踏み跡が中々見つからない。ヘッドライトが必要なくらい暗くなったが、何とか永喜さんが避難小屋に出る枝沢を発見して助かった。空が明るく精神的に落ち着いているならなんてことはないのだろうが、こういう状況だと見えるものも見えなくなる。非常に恐ろしい事だと思った。とにかく雷に打たれないようかがみながら急いで避難小屋に入った。

避難小屋
避難小屋は恐らく避雷針が無いので雷が当たりやすいからそのまま下山するべきという意見もあったが、避難小屋の周りに小屋より高い木が生えておりかなりしっかりした小屋だったので、落雷の危険があるなか暗い登山道を下りるよりはこの避難小屋に泊まった方が良いという判断をして小屋に泊まることにした。小屋には巻機山の整備をしている団体が2パーティー来ており、食事を分けてくれたりとコーヒーを頂いたりと親切にして貰えた。次の日は他のパーティより早く小屋を後にした。

井戸尾根
稜線上はかなり整備されているが、木が見え始める頃から道が急になり黄土の部分がかなり滑りやすいので注意が必要。両側が切り立っているとかそういうことは余りない。

電波情報
威守松小屋:docomoあり(時々切れる) 入渓点:docomoあり 17m上:docomoあり ゴルジュ内(2段10mの上):docomoあり ⑦7m上:docomo圏外 避難小屋:docomoあり(時々切れる)

総評
部内ではW1も連れていける簡単で楽しい沢といった評判で自分もそうなんだろうと思い込んでいたが、実際行ってみると危険箇所が多く登攀も難しい所が多くあった。OBの方が「米子は行ったことのある人が付いて行くならそんなじゃないけど全員初見なら結構難しいと思う」とおっしゃっていたそうだが、まあその通りの結果になったと思う。誰も行ったことがない状況でただ噂だけで簡単だと思い込んでいたのは部としても良くなかった。今回は④5m、⑥5m、2段8mなどの滝の対処を誤ったことがコースタイムの遅れに大きく影響したと思われるので、次回米子沢を計画する人は本記録を参考の上より良い対処を模索して貰いたい。それでも当日中に東京に帰ってくるのは厳しい場合があるので予備日は付けておく必要があるだろう。また米子に限らずメンバーにその沢の遡行経験者がいないような場合はほぼ間違いなく何らかのトラブルが発生すると思われるので、余裕のあるコースタイムにしたり、お守りとしてハンマー・ハーケンを持っていくなどの対策を取って貰いたい。





























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