【08六プレ 豆焼沢遡行の記録 】
※この記録は一橋大学ワンダーフォーゲル部(以下HWV)の部員が記録・作成したものです。主たる対象はHWVの後輩であり、レベルに関する表記などはHWV基準で書かれています。
また、記録対象が「自然」であるため、ここに書かれている記録通りの状態が永続することを保証するものではありません。
メンバー :
CL-安井(W4)SL-清水(W5)医療-北原(W2)装備-西垣(W2)
日程:
▲出合いの丘~0:35~トオガク沢出合い~0:15~入渓点~0:50~3m連爆上~1:40~(6)BP適地~1:10~(8)ミニゴルジュ上~1:10~雁坂小屋~2:45~出合いの丘[9:25]
【対処(滝の番号、名称は東京周辺の遡行図)】
出合いの丘からの仕事道
出合いの丘のヘリポートの奥の釣りに関する立て看があるところから入山する。少しくだってすぐのところから右手の斜面を登っていく。途中、ところどころ木の橋があるように道に迷いようがない。ただし、安全ないい道ではない。僕たちはヘッ電歩きで抜けてしまったが、足元には、注意を要する山道。
トオガク沢からの仕事道
エヴァンゲリオンで見たことがあるようなないような近未来的な雰囲気をもつトオガク沢出合いは人工的。BP適地。橋を渡った先から、草に埋もれてしまっている木の階段を少し下ると、右手に続きの仕事道が見つかる。入り口には白い布やビニールのテープがある。途中、少し迷いがちなところがあるが、ひたすら右手に斜面をある道を行けば、しっかりした枝沢にぶつかるので大丈夫。
5m幅広&5m
右巻き。巻き終わりの危ないところには残置ロープが張ってあったのでそれを使用した。それでも少し怖い。ルーファイは簡単。2年前は左巻き対処だったので、残置がなければ、左巻きがいいかもしれない。下降は懸垂必須。
作業小屋跡
BP適地。ただここに泊まるくらいならトオガク沢泊まれば。
三又跡の3m連爆
一段目は右から釜をへつり、直登。登りきる最後のところが、ホールドがあまりなかったため、危険だと思い、岩から念のためPWRを出した。6プレということなら、必要なかった気もする。二段目は左から直登。
4m
右をまき気味に登る。まさにその対処でよかったという感想。難しくはない。
6m&12m
渇水していたのか右の12mには水が流れていなかった。対処は真ん中の乾いたところを直登。階段状になっているので問題ない。
3m
左から直登。少しせまいので、体の使い方が難しい。
8m
水がながれているところではなく、左のルンゼを登る。かなりせまくて、ところどころザックがひっかかるが、簡単。右から直登できそうだが、しない方が賢明、登り始めのところまで行くのに落石ポイントがある。詳細は後述。
3m
記憶なし。簡単だったはず。
6m
記憶なし。簡単だったはず。
→ぼろぼろの残置ロープが出ていた。左の階段状を登る。何のための残置か不明。
(4)4段50m
東京周辺の表紙の沢。もちろん登らず左巻き。登り始めは簡単だが、途中の2段目ぐらいを望めるあたりの巻き道は、落ちたら確実に死ぬ岩登りになっている。登攀のレベルは、ここの明るい二俣前の3mくらいなので、何とかなるのだが、怖い。そこを突破すれば、小尾根に乗る。すると左手から合流してくる巻き道が…大滝手前のルンゼ状をつめてあがってくるもう一つの巻き道のようだ。できたら、こっちを使うほうがよい。小尾根に乗ってからの下り始めにはしっかり赤テープがある。大きな倒木の下をくぐって下る。最後のところで木をつかんでのクライムダウンがあるが、危険はない。
下降については、今回、僕らが使った道に関しては不可だが、もう一つの巻き道なら可能かもしれない。
2m&6mルンゼ状
2mは簡単。6mは右から巻く。巻き始めが泥壁で難しいが、木の根をうまく使えば突破できる。細い木の根をホールドにするので怖い。後続はPWRを出せるので簡単。
(5)4段24m&6m&3m
わけもわからないうちに全て右巻きした。全く参考にならないので、対処は省略。去年の雨降りを彷彿するような、踏み跡さえ見つからない、不安だらけの巻きでした。結果として、一番の危険箇所にしてしまいました。反省です。
10mナメ滝
左から直登。ナメ滝にしては斜度があった印象。落ちたら危ないがホールドがしっかりあるので突破は簡単。
(7)スダレ状50m
一段目は先ほどの10mナメ滝と似ている。対処も一緒で左から登る。少し斜度がゆるまるあたりも変わらず左から、木などをホールドにしつつ進む。二段目は右から。かなり長い間、腰を曲げて四足歩行をしいられ、だるいので、集中力を切らさないように注意する。
6mナメ滝
記憶なし。簡単だったはず。
(8)ミニゴルジュ
対処は全て直登。
一段目は、流れの中にスタンスを見つけられなければ、かなり苦しい登攀になってしまう。もし後続が突破できなければ、ハーケンを打ってPWRを出すなどしてもよいだろう。ハーケンが打てそうなクラックはあります。
二段目は直登もできるが、右から巻くことも可能。直登する際には、ホールドとする木がもろかったりするので、後続には念のため木からPWRを出すのがいいだろう。僕は実際、出した。
三段目は記憶なし。余裕だったはず。
ミニゴルジュ
対処は全て直登。全ての滝のレベルは、小草平の③くらい。突破できない際に、PWRを出すのが難しいが、ここに来るレベルのPなら登攀は容易だろう。
二俣後
二俣をすぎれば、あっという間に水がなくなる。どうやらその後の小滝は埋まってしまったようだ。そのせいで、単なるツメ。体力的にはかなりつらい。雁坂小屋への登山道は細いが、特別、問題はない。
雑記
夕方の七時半に立川集合で、レンタカーで出発。まさか、このときは24時間後に、再び立川に集まることになるとは思いもしてなかった。途中、バケツをひっくり返したような大雨に合う。二時間ドラマなら必ず事故を起こすようなシチュエーションの中、僕は慎重に運転する。これは、入渓は無理かもしれない、と萎えていたが、秩父の道路は全く乾いているという奇跡。どうも秩父の天気はひねくれているらしい。
雁坂トンネル通過は710円かかるが、地理マニアな方たちはうなるようなトンネルらしい。清水さんが少しそれについてしゃべってくれましたが、もう覚えていません。
それより僕にとっては出会いの丘す。思えば2年前、ここで高橋さんにローリングアタックをいただいたのです。懐かしさだけでは形容しきれない思いです。あの時は、気持ち悪い、みたいなリアクションをとってしまったように記憶していますが、改めてすいません。ほんとは、気さくに接していただいてうれしかったです。
心地よいテン場で、12時就寝。せっかくテントを出したのに、西垣と北原は外寝。そしてテント内は僕と清水さんの2人きり。北原にそれがなぜか気持ち悪いと言われつつ、ピロートークしてしまい結局1時半に寝る。
3時起き。その日の夕方から天候が崩れるということで、一日で豆焼沢を突破することが望ましいというリーダー判断でシビアな4時出発、ヘッ電歩きを実行した。助かったのは、意外と4時でも明るかったことだろう。またメンバーの気合ものっていたので、とにかく仕事道は早かった、迷うこともなく全く順調だった。個人的にも久しぶりの上級者用の沢ということで、かなり集中力が駆り立てられていて、体がキレていた。
しかし、そんなときに落とし穴が良くあるもの、というのは定説です。明るい二俣前の8mで崩壊事故。直登のルートを清水さんと僕が見に行ったときにやってしまいました。清水さんの機敏な動きがなければ、危なかったです。大きい岩がごろごろしているようなところなので、本当に怖かった。清水さんは打ち身、僕は親指を軽く切る怪我。それまでの押せ押せのテンションに冷や水という感じです。
なんとか立て直し、(4)4段50m、2m&6mルンゼ状を突破。正直、ここをトップで突破することで、僕は精神的に疲弊していました。そのせいで、2m&6mルンゼ状突破後、次の(5)4段24mをよく見ることなく、右巻き開始。で、途中で踏みあとを見失い、はまる。実はそれは、そもそも(5)4段24mの巻き道ではなかった説が濃厚。実際、小尾根につきあげたところ、(5)4段24mの一段目が眼下にあった。つまり(5)4段24m前の小尾根を無駄にツメ上がり、ツメ降りてしまったようなのだ。そこからは、懸垂を主張してみたり、逆オーダーになったり、パワーロープを懸垂みたいに使ったりなど、しっちゃかめっちゃかでなんとか突破。そうしたら(6)BP適地が目の前に…知らぬ間に6m&3mも巻いてしまっているという全くひどい対処でした。
(8)ミニゴルジュ後、完全にばててしまった僕は清水さんにトップを交代してもらう。そして、二俣後は、今度は、北原、西垣の若い衆を先行させ、僕と清水さんがのんびり登るというオーダー。西垣は少し、沢歩きに精神的な面で疲れていたようだが、北原は本当に元気だった。
黒岩尾根の下山はむしろいい下山道だったのだが、CLが、捻挫をしてしまう。捻挫直後は痛くなかったので、歩行を続行していたのだが、変な足の置き方をしてしまい悪化、テーピングをしてもらうことに。そこからしばらくはカタツムリほどにしか動けなかったのだが、徐々に足の痛めていないケンを使った歩き方を編み出し、一気に走り下山。対応力に定評があるCLでよかったです。
【CLコメント】
上記にさらに付け加えるとしたら、気温判断が大事だということ。(6)までは巻き中心の沢なので、問題ないのだが、(6)以降は水線突破ばかりなので、ホールドをしっかりつかむためにも、冷たい流水に負けずに登るためにも、気温判断は慎重に行うべきだろう。
沢の感想について言うなら、秩父つながりでいうと、僕が行ったことのある釜ノ沢、大常木谷にくらべて、対処が必要な滝が多く、またその対処も直登あり、巻きありでなかなか集中力を切らすことができないタフな沢である印象をもった。実際、入渓までの仕事道も、雁坂小屋への登山道もすべったら大怪我するような道だし、リーダーは心身をすりへらすことになるだろう。そのあたりも含めるとこの沢は6プレではなくリープレレベルではないかと思う。個人的には去年の大常木のほうが簡単だった。
自分の得たものとしては、やはり久しぶりに、清水さんと対処などもろもろを話し合いながら沢を遡行できたことがよかったと思う。リーダーとしての経験値がたまるのは、こういう山行でなくてはならない。そういう意味で非常に有意義な山行であったと思う。またそのようなリーダーとしての姿を二年生に見せることができたのも良かったことだと思う。ただ個人的な体力面のふがいなさは要反省。
【SLコメント】
4段の巻きで微妙なミスをした以外はほぼ完璧な対処だった。
体力・巻き能力・登攀能力すべてにおいて6プレの名に恥じない(もうちょっとレベルは上か?)山行であった。
考えてみると、北原にとっては「日帰り一級」以上のレベルは初めてであり、「きれいなところにいきたい」と言い続けていた彼を、奥秩父に連れてこれたのは大きな収穫であったと言えるだろう。もちろん、彼のレベル上はなんら問題はない。また、リーダーを補佐する役目も十分に負っており、今後安心してリーダーを任せることができると感じた。ただし。本山行で確認できなかったロープワークは別。
西垣も「ついてくる」ということは十分実行できていた。あとは、リーダーとして、必要な能力が身に付いてくるかどうかである。これについては、さしせまった文登研で成長して欲しいと思う。
二年生二人が何より素晴らしいのは、その体力である。
一方でW4・5は怪我したり、下山後発熱したりと、散々であった。
このような感じで、良い訓練でありながらも、それぞれの課題が浮き彫りになるプレにふさわしい山行になったと思う。