夏合宿二次プレ・釜の沢・西股
(この記録は、フィクションです。作中の登場人物・団体の言動は、意図的に加工されていることを予めご了承下さい。)
CL記録:渋谷 SL:中村 ジャニーズ:麦田 奴隷:
前野 下僕:月瀬 犠牲:小倉
金曜日
一次合宿の翌日出発という強行軍が祟ったか、メンバーにミスが目立つ。前野は、笛とコンパスを忘れ、月瀬は大遅刻。ほぼ終電で塩山に到着する羽目になった。
土曜日
力強い空の青さが目に染み入るほどの快晴であった。やはり、N村がいないと晴れるだろうか。N嬢に「Miss 釜の沢」とこっそり命名して遡行開始。六月山行の苦労が嘘のように、快適な遡行が続く。二股分岐まで所要時間を二時間程縮めて到着
。魚止めの滝はすぐそこだ。魚止めの滝には、いつもの倒木が立っておらず、CLがパワーロープを連結して上から垂らす。滝上に登ろうとしたら、上から社会人遡行者が大勢到着。先におりてもらう。続く滑り台は、メンバー一同童心に帰り大ハシャ
ギとなった。あの時のCLの喜びようが忘れられない、と当時一年だった小倉志保は、数年たったあとでも遠い目をして語る。CLも水面を覗き込んでうっとりとしている麦田の姿が忘れられない。
緑の廊下の異名をとる千畳の滑を駆け上がり両門の滝下へ。全員で、今は亡き愛子さんの無念に頭を垂れ合掌。さあ、これからはワンゲル未開の領域である。西股にかかる30m大滝を右岸から慎重に巻く。若干高度感はあるが、予想に反して道はし
っかりついている。踏みあとを辿って簡単に滝上に到着。新東京付近に沢にある②の2.5m滝は滝横すぐ右から取り付くのがベターだと考える。きつめに見えるが、落ちてもドボン!だ。まき気味に右から取り付くと脆いホールドと意外にキツイ傾
斜で苦労する。実際、一年生をみるとはまっていた。③の滝は、倒木がないと確かに辛そうにみえた。われわれは、あっさり左岸から超える。④をまき、不気味な釜をもつ⑤滝を右から巻くと左から小ルンゼがはいる。この辺りから、両岸が少しずつ
開けてきて、開放感がでてくる。この後は、変哲のない奥秩父らしいゴーロを歩き、1:2の分岐から200m程手前でテントを張る。夜の焚き火は、盛大な物となり、アルコールの消費量も大幅に伸びた。消費口の9割が、二年以下であったことは
、言うまでもなく当然のことだった。このパーティーのリーダー層は、意外に横暴である。いや、下級生の喜びのために尽くす、リーダーの鑑ともいうべきか。自画自賛すぎかな。わはは
。
日曜日
朝から、ドンドン飛ばす。⑦は左から登る。1:1の二股では、大滝を左の本沢奥に見送りつつ、右沢に入る。ここからは、基本的に新東京付近周辺の沢通りに進む。さすがに、新しいだけのことはある。記述は緻密かつ正確だ。これといって、危険
な個所もなく、⑬の多段10m曲がり滝を越えると、白骨状の倒木で道が塞いでいる。確かに、不思議な光景だ。枝をかき分け、倒木をくぐりながら前に進む。我々は、1;1の分岐までは、沢沿いに進んでいたが、もっと前から尾根に乗ったほうが
楽であったかもしれない。踏み後は、それなりについている。ツメは、一年生には意外ときつかったようだ。一年、小倉は大分遅れる。上級生だけなら、あっさり通過できるとは思うが。尾根にあがると、2396のミズシはすぐそこだ。30分程の
距離である。だが、簡単なことほどうまくいかないのが、このパーティーの業。ミズシ直前の見晴らしのいいところで、何故か休憩。奥秩父の山々を一望し、ひんやりと肌に心地よい山風に身を任せながら、しばしの時をまどろむ。・・・いけね、一
時間も寝ちまった。展望の利かないミズシは、あっさり通過し、甲武信岳に至る。悪名高き近丸新道のために、山小屋で小倉のザックを解体し、下山開始。先頭を任せた月瀬は、矢のごとく駆け下りる。張り切りすぎたのか、徳ちゃん新道への分岐を
見逃したようだ。ところが、小倉の足の調子が思ったより悪く、スピードがあがらない。・・・だが、なんとかぎりぎり五時の下山電話に間に合った。塩山で反省会をして解散。天候に恵まれ、充実した山行であった。
リーダーコメント
釜の沢西股は、部内初。未知の沢で、パーティーの力を底上げするのが狙いであったが、その目的が果たせたのか疑問である。上級生的には、物足りなさが残るであろう。ただし、晴れた釜の沢は絶品である。遡行の楽しさをここまで満喫できる沢は
、東京付近では少ないのではないか。また、一週間の間にリープレ、一次プレ連続しパーティーの疲労が蓄積されていたようだ。慌しい日程を組まざるを得なかったのは、この夏合宿通しての大きな失敗であったと考える。個人的には、ワンゲルを通
して必ず行っておきたい沢であっただけに、非常に満足の行く山行になった。