夏合宿part1 二口山塊 大行沢
上野駅に午後一時半集合。
盛大なお見送りを受け、出発。大竹さん、井口さん、山形さん、橋本さん、大志、ゴン中山、寿子さん、水間さん、お見送り
どうもありがとうございます。
三年連続東北本線に乗って夏合宿はスタートした。仙台駅で買い物を済ませ、夜出発。運転手を一年小倉が色香で釣って、六人全員で一台のタクシーに乗る。代金は、福沢諭吉
が一人と夏目漱石が二人ほど財布から御亡くなりになる程度ですんだ。小倉嬢偉い!感激した。
大行沢は、出会いからアスファルトのような滑が続いている。この記録を書いている段階で既に二年が経っているが、個人的には、スケールで吾妻連峰の大滝沢に劣り、色の白さで、森吉
山の桃洞滝・赤水沢より上だと思う。見事な沢だ。
大理石を磨き上げたようなゴルジュ帯を恐る恐る通過。途中、寒さをものともせず、ガンガン飛び込むパーティに先を越される。F1は小さく巻くのがいい。足場はある。大きく巻こうと
した渋谷は苦労した。F2途中で暖かくなってきたので、一休。みんなガンガン釜に飛び込んで遊ぶ。気持ちいい。 登山道から、ひょっこり現れた年配の遡行者が、僕らのはしゃぎっぷ
りに呆れていた。痴能指数は、高いです。ハイ! F2は、井口さん曰く、神々しい滝とのこと。確かに、上岩が半円形に成っていて見応えがある。右からあっさり巻く。その後、巨岩帯
に突入。先頭を歩いていた渋谷は、途中突破にてこずり、後ろに違うルートを指示。本人は、あれっ!ずっこけて、顎を打つ。突破を諦めて、後発隊が辿ったルートで合流。気を取り直し
て出発・・・。と、周囲の視線が重いのに気づいた。渋谷さん、顎から血が出ていますよ・・・。とりあえず、救急箱を取り出して治療。出発前に上級救命士の資格を取ってきたが、まさ
か自分が治療されようとは思わなかった。人生は、予定通りにいかないから面白いのだ。中村が淡々と呟く「渋谷・・・、顎が切れているよ。」この言葉に一番ショックを受けたのは、誰
だったのだろう? 少なくとも渋谷は、普段通り無表情を装いつつ、内心激しく動揺した。小倉は天を仰ぐ。夏合宿が終わったと思ったらしい。前野は、大岩の上で大の字で寝ていた。
中村との相談の上、一時撤退して病院に行くことになった。 すこし戻り、沢に平行している登山道からエスケープ。 一時撤退が、永久になるのか否か。誰もが頭で考えていたにちがい
ない。下山して、救急車を呼ぶ。自分で救急車を呼ぶとき、なんとも言えない気恥ずかしさと誇らしさを感じたものだ。てへ
っ。
その後、渋谷は麦田と共に、仙台市内の病院に行き、顎を四針縫った。衛生上のため十日間ほどアウトドア活動を禁止されたが、当然のことながら無視した。簡易手術室を出ると、麦田が
しょぼくれた様子で待ってくれていた。心配させてしまったな。麦田の言葉に胸がつまる。「渋谷さん。可愛い看護婦がいないですよ、残念。」第一声がそれかいっ(怒)でも、さすが麦
田。君は、一体何を期待してきたのかね?
翌日、我々は気を取り直して再出発した。昨日と脱出してきたルートを辿り、F2を超えたあたりから再度、遡行開始。魔の巨岩帯をあっさり通過して、F3に差し掛かる。F3は、ステ
ップが切ってあって見た目ほど、きつくはないはずだ。その後、暫くいくと、天国のような滑が洗われる。渋谷も昨日、あやうく天国に行きかけたことをすっかり忘れ、童心に帰る。緑あ
ふれるブナの森なかでこんな所があるとは不思議だ。今日ばかりは、ヤサぐれた麦田も、はしゃいでいたようだ。正直、気味悪かったが。お見送りの変装道具を使って、即席の仮装大会も
開かれた。 なんの変哲もないF4滝では、お約束の飛び込み大会。一年の小倉嬢を抜かして強制的に飛び込ませる。前野が、5分近く釜を覗き込みながら迷っていたのには笑えた。 そ
んな前野も、痺れを切らしたリーダーの命令でドボン。全く、酷いリーダー達である(他人事)。F5を確保しつつ登らせたところで、避難小屋発見。予定とは一日ずれたが、そこで一泊
することにした。 渋谷は、焚き火の準備のため、枯れ木を拾い集める。が、片割れの中村は、愚図ついた空模様を観て、早々脱落。今日は無理、と小屋に引っ込んだ。薄情なことにメン
バーの誰も協力してくれない。せっかく色々用意したのに・・・。もうどうにでもなれ!と、悪態をついたら、本当に雨が降
ってきた。俺が一体何をしたというんだ。己の不運さと天の怠慢ぶりを嘆く。土砂降りになった。それでも諦めずに、枯れ木にツェルトをかけて、とりあえず雨をやり過ごす。 夕食後、
再度焚き火に挑戦。湿った木も、こちらの熱意に負けたのか、渋々白旗を上げてきた。結局、渋谷は持ってきたトウモロコシ
やジャガイモも美味く焼けて大満足した。やはり、沢旅には焚き火が欠かせない。そんなこだわりを確信した一夜だった。
翌日は、早々に登山道に乗り上げる。本当は、桶の沢を詰めたほうが、圧倒的に楽なのであろうが、なぜかこのパーティは、登山道から南面白山に行く。この登りは、意外に急登で疲れた
。快適な沢をつめることをお勧めしよう。くだりは、若干の波乱を含みつつ、なんとか無事下山。ようやく、パート1が終了
した。
仙台駅で、椎谷Pの夏合宿終了の報告をうける。我々は、PART2に計画していた安達太良山の杉田川遡行を諦め、PART3に進むことになった。