【08リープレ 小室川谷遡行の記録 】
※この記録は一橋大学ワンダーフォーゲル部(以下HWV)の部員が記録・作成したものです。主たる対象はHWVの後輩であり、レベルに関する表記などはHWV基準で書かれています。
また、記録対象が「自然」であるため、ここに書かれている記録通りの状態が永続することを保証するものではありません。
メンバー
CL:安井(W4) SL:西垣(W2) 顧問:清水(W5)
コースタイム
0}塩山駅~タクシー(約1万円)~▲小室川出合(三条新橋から40分歩いたところ)
1}▲…0:15…入渓点…1:45…(4)3段8m上…1:30…中ノ沢出合い…1:50…(8)4段30m上…1:30…ジャヌケ沢出合い…2:30…稜線…0:30…大菩薩嶺ピーク…0:50…福ちゃん荘[10:40]
総評
かなり水量が少なく、一番の問題箇所となるであろうS字峡があっさり通過できてしまったので、6プレで行った豆焼沢より簡単に感じた。ただPTのメンバーによっては、かなり遡行時間やレベルが変わる沢だと思う。ジャヌケ沢前後からのツメのようなジワジワ高度をあげる沢歩きは体力がなければかなり大変である。それだけではなく、小室川は小滝が多く、また全体的に岩が大きく、ただのゴーロ歩きのなかでもクライミングの動きを要求される場面もあるので、PTにクライミングが苦手な人がいれば遡行時間も危険も大きく増すことになるだろう。逆に言えば、PTの力の確認としてはいい沢。やはりここは上級生用の沢であろう。
そのほかの注意点は、(1)、残置ロープの滝など、単純に腕力がなければ登れないところがあるところ、とにかく岩がすべりやすいところ、あまり遡行されない沢なのか巻き道が定かでないところ、BP地も整備されていないことが多いところ、があげられる。逆にいいところはやはり普段と違う渓相の沢を遡行できることだろう。奥秩父とも違う景色なので新鮮な気持ちで遡行することができた。
対処
入渓まで
塩山駅までの電車では、見事に相模湖の花火大会のリア充たちと鉢合わせてしまい、いきなりイライラさせられてしまいます。みんな楽しそうでしたけど、それが余計に腹ただしい限りです。それから、コンビニで買出しをして、タクシーに乗車。ラッキーなことに三条新橋のゲートが取り外されていたので、予定とは違い、入渓点の小室川出合いまでいくことに。入渓点は、車道にすれ違い用の側道があるところで、「この先、歩道が崩壊している」とかかれた看板があるところです。油断していると見逃すので注意です。泊まる場所はその先を少し歩いたところの、やはりすれ違い用の側道で広いところを見つけてテントを張りました。
翌日は4時半から行動開始です。看板のところから沢に下りる道が続いています。かなりよく整備されている道です。途中、右折する道がありますが、そちらは橋が壊れていて使えなくなった道です。入渓は泉水谷を橋で渡ったところからすぐ。道はそのまま続いていますが、どこに行くかはわかりません。
3m4m連爆
一段目、二段目ともに右から。一段目は左からも登れるが、登ったあとはどうしようもなくなるので、必ず右から。ルンゼを少しつめ、途中からトラバースするように突破する。二段目は水の流れているところではなく、残置ロープがある乾いたところをのぼる。直立していてホールドのないところを登るので、結果としてロープをゴボウして登ることになる。かなりトップは怖い。なので、後続は確保した。確保支点は残置ロープの支点とは違う太い木から。
(2)8m滝
水量が少ないためか。あまり濡れることなく右から釜をへつり、水流右側を直登できた。あまり印象はないが、PRも出していないし、簡単だったはず。
(3)5m滝
水が少なかったので直登で突破した。水の流れていない、ヌルゴケですべりやすい右壁を登った。すべりやすいことさえ注意すれば余裕だった。突破してから、後ろを見てみるとかなり高いところから残置ロープが出ていてびっくりした。あまり右巻きはしたくない。
(4)3段8m(S字峡)
3段を左、右、左の順で突破した。水が少ないせいで非常に簡単に登れてしまいました。あまり滝の印象も残っていません。それよりも、一番の危険箇所を突破できたことから油断が生まれていたのか、自信満々に松尾沢に進んでいった恥ずかしい記憶の方が鮮明です。必要ないかと思いますが松尾沢に入ってすぐのナメ小滝はなかなかすべりやすいので注意してください。
残置ロープの滝(石門の滝)
滝の左壁のあたりに残置シュリンゲがあるが、こちらは上級者用のリード登攀で使うことになるもの。僕らは3本の残置ロープがたらしてあるところから左巻きする。ここの登攀はかなり怖い。高度感はあるし、最上部はホールドもスタンスも細かく、ロープにガン頼りしなければ登れない。ある程度の腕力がなければ、挑戦すべきではないだろう。できれば、ロープや周りの木などからランナーをとり、リードで登るべきだと思う。当然、後続は確保。支点はどこからでもとれる。
(6)小室の淵
泳いでとりついて登るのは滝に乗り上げるところが難しそうだったので、右岸巻きを選択。巻き道は特に問題はなかったはず。
中ノ沢出合い
ビバーク適地はずばり出合いにあるのではなく、10分ぐらい遡行を続けたところにあった。テント一張り分ぐらいのスペースがあった。
8mナメ滝
右から登る。簡単。
4m滝
左巻きor直登。左巻きは、左壁に残置シュリンゲがあるのでそこから。この残置シュリンゲはトラバースの補助に使うはずなのだが、なかなか使い方が難しい。
なので、僕らは左から直登。すべりやすく、ホールドはあまりないが、倒木があるので、うまく使えば登れる。なかなか難しかった。
(7)10m雨乞いの滝
沢に下りてくる道を後で確認したところ問題ないように見えたから、おそらく左巻きが正解だと思う。
僕らは右巻き。巻き始めはルンゼをつめあがっていき、滝を巻くだけの高度を上がったな、と思ったところでトラバースするルート。ふみ跡がうすくあるし、残置シュリンゲがあったりするので、わかりにくいもののじっくり偵察すれば、道はわかるだろう。ただこちらの巻き道は沢に降りる道があまりよくない。結果としてPR2本で降りることはできたが、途中は懸垂も考えたぐらいなので、よく注意して進む必要がある。
(8)4段30m
2段目までを左から登ってから左の巻き道をたどる。入口はルンゼからで、非常に分かりやすいが、あまり上部までつめすぎないこと、僕は少し目の前に見えた巻き道が頼りなく思えたので、上部までつめたが、結果として間違っていました。正解の巻き道は滝を見下ろしながら進む道です。また4段目を巻き終わるところの道が倒木のせいでかなり不鮮明です。あまり倒木を嫌いすぎず、むしろ倒木を手がかり、足がかりとして進めばわりと安全に巻いてしまえます。
4m5m連爆
ともに左から直登。5mの方は若干難しかった。
(9)2段20m
共に右から。水流の右をまき気味に。どちらもルートは明らかで、同様にルンゼ状になっているところから登り始め、途中から滝の落ち口にトラバースする。そして、このトラバースは手がかりがないため少し危ないので、どちらも木からPRを出して補助した。ただこのPRは、蛇足ぎみだった気もする。
(10)ジャヌケ沢出合い
ここはしっかり対処として明記しておいてもいいくらい間違いやすいので要注意。
間違えやすい理由はたくさんある。ジャヌケ沢出合いの前に右岸に小沢が流れ込んでくること、長いゴーロ歩きで意識が飛びがちになってしまうこと、ジャヌケ沢の方が開けていること、小室川谷の出合いが崩壊していて、伏流しているように見えること、からです。
間違えないようにするために、注意して歩くこと、コンパスを沢筋だけではなく、尾根筋にもあててじっくり読図することが必要だろう。
ビバーク適地は、出合いになんとかテントを張れるスペースはあったのでそこだと思うが、石をどかすなどの整地作業が必要だと思う。
12m階段状
下部は右の乾いたところから、上部は右のクラックを使って登る。難しくはない。{僕は左から泳いで取り付きトイ状を登ったが、登りきれずすべりおちました。ここまでのゴーロ歩きから久しぶりの滝だったのでテンションがおかしかった模様です。}←ここの記述はこのあとの他のナメ滝での話しだったらしいです。
小沢後の4m滝(記載なし)
聞いていないよ、という滝。左岸にルンゼがあるところにしっかり直立したこの滝がある。対処はシャワークライムになる直登ではなく、乾いた左壁から巻いていく。その際、木を手がかりに使って登るのだが、木がザックにひっかかるので、よく注意する。
小沢後の5m滝(記載なし)
少しクラック状になっているせまい滝を、両手をつっぱりつつ登る。スタンスがもろいこともあり少し怖い。
ツメ
ジャヌケ沢出合い以降は全てツメと言ってしまってもいいと思う。最後の100mをあげるところで倒木に先を塞がれてしまったので、藪漕ぎをして、登っていった。とにかくこの沢はジャヌケ沢を越えてからの長い長い500m高度を上げるツメが大変なので、心して望んでください。ただ、その分、稜線に上がったときの展望のすばらしさには感動します。大菩薩嶺は、あんな展望が360度きかない糞ピークではなくここです。ちなみに稜線に上がった時間は15時30分。出発から、11時間かかりました。
コメント
CL:
沢の感想は、ほぼ総評とかぶるのですが、とにかく体力的にしんどい沢だなと思いました。特にクライミング技術に不安のあるPTなら、さらにこの沢のしんどさは倍増していくはずです。あと、久しぶりに巻きではなく登攀で怖い思いをさせられました。残置ロープの滝です。これから行く人は注意してください。
逆によかった点はやはり普段と違う沢に行けたことです。どの滝をとっても迫力がありましたし、序盤はただの沢歩きも景色のおかげでかなり楽しめました。
個人的な反省点は、なぜか今回は、滝の対処を除く下調べがあまかったことです。PTにとって初沢であったにも関わらず、ツメがあまかったです。この反省をこの夏の間、しっかりと胸に刻み込んで、完璧で安全な沢合宿をやるつもりです。
SL:
感想は、トップは登攀でかなり怖そうでしたが、後続としては結構楽しかったです(ジャヌケ沢までは)。ジャヌケ沢を越えてからのゴーロ歩きはヤバイです。まじで疲れます。倒れそうになります。ゼンツです。なので、一日で遡行するのはするのはオススメできません。まるで雨降の再来って感じでした。かといってBP適地とされているところもたいしていい場所でもありません。まあいずれにせよゼンツってことですね。
SLとしては、私なりに緊張感もって参加させていただいたつもりです。文登研あがりですから。
というわけで、私が、SLとしてしなければならないこと(遡行前に考えていた事シリーズ)は
・滝についたらCLと相談して対処を決める
・CLの補助をする(あいまい)
ぐらいのもんでした。しかし、皆さん周知のとおりホントはこんなもんじゃ有りません。
例えば、メンバーの体調に気を配る(たとえ清水さんでも)、天気に注意する、分かりにくい所にきたらメンバーを呼び止めて読図をする、思ったことはバンバン言う、最終計画書を提出する、もちろんこれだけではありませんが、こういったグローバルな視野を持ち、なおかつアグレッシブにいく気概が必要です。もちろん体力も必要です。今回、4段30mの巻きのあたりから私はホントに疲弊してしまい、途中から清水さんとSL交代状態になっていました。反省しております。
SL(に限らずリーダー)は自分の面倒を見ながらも周りを360度見渡さねばならないわけなので、大変な仕事です。“気遣いの心”をもち、それが行動として表せてはじめてSLの役割を果したといえるでしょう。この夏を通してそういった精神が身につくよう頑張っていきたいと思いました。
顧問:
メインテーマである「西垣の実力確認」であるが、現時点では「ぎりぎり葛根田川SLを任せられる」というレベルだろう。これで、文登研でしっかり成長してくれれば、もう大丈夫だろう。
私が抱いた沢の感想は「日帰りで抜ける沢ではない」ということだろう。釣りができることや、行程の長さを考慮すると、どこかで一泊した方がいいだろう。っていうか、ジャヌケ沢以降の苦行を考えると、そうしないと嫌な印象しか残らないだろう。ただし、BPについては「随所に泊まれる場所はあるが、完璧にはまるところは非常に少ない」と言えるだろう。もちろん、泊まる気がなかったので真剣に探していなかったということもあるだろうが。
レベル的な話は、ただ「水量」に左右されるだろう。豆焼よりは難しいと思うが、気合いを入れていっただけに拍子ぬけ感は否めない。それもオーダーによるところもあるだろう。ここは(大山川ほどではないが)トップが疲れる沢だと思う。体力的によりも精神的にだ。今回確保した二か所は確保ありなら、まったく怖くないが、フリーならなかなか骨が折れるだろう。