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残雪期縦走/前日発一泊二日/北ア パノラマ銀座縦走/CL:山口 SL:辻


北ア パノラマ銀座縦走

日時 2022.5.13~14

山域 北アルプス南部

文責 辻、ほとんど山口

メンバー CL:山口(2年)、SL:辻(2年)

天気 一日目:曇りのち雨、二日目:小雨のち曇り

地図資料 山と高原地図「槍ヶ岳・穂高岳」2019版

コースタイム

〈一日目〉上高地バスターミナル発(5:40)-0:34-明神分岐(6:14~6:28)-0:41-徳沢(7:09~7:20)-3:28-長塀山(10:48~11:19)-0:29-妖精ノ池(11:48)-0:29-蝶ヶ岳ヒュッテ(12:17~12:49)-0:11-2625m分岐(13:00)-0:14-蝶槍(13:14~13:23)-1:23-2592mピーク(14:46)-1:06-2512mピーク(15:52)-1:20-常念岳(17:12~17:36)-0:08-分岐(17:44)-0:40-常念小屋(18:24) 合計10:43(休憩2:01)

〈二日目〉常念小屋発(6:12)-2:13-東天井岳直下(8:25~8:44)-1:16-大天荘(10:00~10:20)-0:15-大天井岳(10:35~10:46)-0:30-喜作レリーフ(11:16)-1:28-大下りノ頭(12:44~13:01)-0:51-燕山荘(13:52~14:49)-0:34-合戦小屋(15:23~15:28)-0:59-第二ベンチ(16:27)-0:58-燕岳登山口(17:25) 合計9:04(休憩2:09)

コース記録(YAMAP)


【詳細】

〈一日目〉上高地~徳沢~蝶ヶ岳~常念岳~常念小屋(泊)

 行きはバスタ新宿から夜行バスで上高地へ。席をネット予約したときは残り5席だったのにバスはがらがらだった。天気が良くないのでキャンセルした人が多かったのだろう。翌朝、上高地に到着。上高地から徳沢に向けて歩きはじめる。誰もいない梓川と河童橋の景色を楽しむことができた。ところどころで左手に明神岳を望む。今回の登山で景色を楽しむことができたのはこの時だけであることを、当時の私たちは知る由がなかった。

 徳沢に到着し長塀尾根を登り始める。しばらく雪はなかったが標高2000mくらいから雪が現れる。アイゼンをつけるほどではなかったが雪の踏み抜きが何回もあって辛かった。木の周りの雪は踏み抜きが多いと学んだ。ひたすら長塀尾根を登り続け、長塀山に到着。ここでアイゼンをつけた。妖精ノ池は霧も相まってなんとも神秘的な様だった。山口はここで正午までが期限のフランス文学の課題を提出。歩きながらずっと考えていた甲斐あってか高評価で嬉しい。さて、蝶ヶ岳の手前で樹林帯を抜け稜線に出る。しかしガスっていて展望はゼロ。やがて蝶ヶ岳に着く。予定よりも時間が押していたので蝶ヶ岳ヒュッテに泊まっての2泊3日の行程に変更するか、続行するか話し合う。今回は日曜日を予備日にしており、予備食も用意していたので2泊3日でもよかったが、結局続行することにした。この時から雨が降り出した。

 蝶ヶ岳から蝶槍あたりは雪は残っていなかった気がする。蝶槍を過ぎると雪が現れる。再びアイゼンを装着。たいてい稜線の東側に雪が残っていた。端の方は雪庇のようになっていたのでできるだけ内側を歩くようにした。雪の斜面を登るのはかなり体力を消耗し、2人ともかなり疲れていた。そして最後の常念岳の登りにさしかかる。この登りは本当に辛かった。雪は残っていなかったがここまでの疲労でなかなか進まない。さらに西側から雨と風とが吹き付けていた。なんとか常念岳に登頂したが、風で寒かったのですぐさま下山した。念のために持ってきておいたバラクラバが役に立った。常念岳の下山はガレ場で時間がかかった。最後は空元気で常念小屋に到着。当初はテント泊の予定だったが、小屋泊することにした。ちゃんと雨具は着ていたが全身びしょ濡れで寒さに堪えており、その時はテントに泊まれる精神状態ではなかった。

 常念小屋はワックスがけをしていたようで、別館に案内された。ほかに登山客はいなかった。乾燥室で温まっているとき真に生を実感した。夜ご飯はカレーを食べ、デザートに辻の実家のしば漬けを使ったチーズケーキSHIBACHEEをいただいた。これは大変美味しかった。夜は2人とも消費者行動の授業の課題をする予定だったが、そんな余裕はなくすぐに寝た。山小屋の人に明日は嵐が収まってから出発した方が良いと言われたので起床時間をちょっと遅らせた。辻は夜中の嵐で何度か目が覚めた。


〈二日目〉常念小屋~大天井岳~燕山荘~中房温泉 ※燕岳は登らず

 翌朝起きると嵐は収まっていた。朝ごはんはうまかっちゃんを食べた。やはりラーメンは豚骨に限る。起床から1時間ほどで出発。小屋を出ると常念岳が見えた。昨日苦しんだ山が今日は何故か美しく見える。小屋を出てしばらくすると雪の急登が現れる。アイゼンをつけた。雪はすぐになくなった。ここで山口の右足の登山靴のソールがはがれた。辻が持ってきていた針金で固定するがすぐにずれてしまう。何度も針金を付け替えたがダメだった。とりあえずロングスパッツのバンドで仮に固定しながら歩いた。この針金の付け替えに結構時間を使ってしまった。

 横通岳は稜線の西側を通過した。東天井岳直下で雪のトラバースが現れ、アイゼンを装着。ここは結構急でアイゼンとピッケルをきかせながら通過した。東天井岳ピークには登頂しなかった。この先アイゼンは使わなかった。大天荘の冬季小屋で少し休憩し、大天井岳へ。巻道は冬季は通行できない。大天井岳は意外とあっけなく登頂。しかし、下山が辛かった。このくらいの時間から風が強くなる。時折体がよろけるほどの風が吹いて怖かった。この下山中、外れたソールがずれてどうしても歩きづらかったので、右足だけアプローチ用に持ってきたランニングシューズに仕方なく履き替える。この先はアップダウンをひたすら繰り返す。この区間は小雨と強風にさらされ続けかなり消耗した。たった2,30mの登りですら休み休み進んでいく様だった。この区間は前情報通り雪は数カ所しかなく登山靴でなくても乗り越えられた。満身創痍の中なんとか燕山荘に到着。この時点で燕岳の登頂は諦めた。燕山荘の人に靴のソールを固定したいと話すと、無償で夏用の登山靴を貸していただいた。大変ありがたかった。

 ここから冬道で中房温泉へ下山した。雪は詳しく覚えていないが途中まで残っていた。下山中に一瞬だけ晴れ間が見えた。今日は山行の辛さから登山に関することしか話してこなかったが、ここでようやく雑談をする余裕ができた。山口は地面に落としたビスケットを落穂拾いと言いながら拾って食べた。辻は自分にスキーの才能があったことを嬉しそうに語る。長塀尾根もきつかったが、合戦尾根を登るのもきつそうだ。やがて中房温泉に到着。

 バスの時間に間に合わなかったので安曇野観光タクシーを呼ぶ。4,50分はかかると言われた。山口は中房温泉から10分ほど下ったところにある燕山荘グループの有明荘に登山靴を返した。穂高駅から国立に帰る最終の電車に間に合うかわからなかったので、運転手さんに急いでもらうようにお願いした。カーブで何度かドリフトするほどの凄まじいドライビングテクニックで通常より20分ほど早く着いた。運転手さんも新記録と笑っていた。本当にありがとうございました。穂高駅、松本駅、甲府駅、高尾駅と普通電車を乗り継ぎ、無事に帰宅した。


【総評】

山口

今回は反省点の多い山行となった。まず体力が足りなかった。重たいザックを背負っての登山は久しぶりで辛かった。また、計画に少し無理があった。他の人の記録を見ると2泊か3泊が圧倒的に多かった。雪上を歩くと通常よりも時間がかかることを勘案して計画を立てるべきだった。1日目に小屋に着いたのも、2日目に下山したのも遅い時間になってしまったのは良くなかった。あと、今回の縦走で一度も槍ヶ岳と穂高を見ることができなかったのは残念だった。一方で、雪山の経験を積めたのは良かった。これから今回の辛い経験を糧にして成長していきたい。最後にこの山行に付き合ってくれた辻君には感謝してます。山スキーの方はがんばってついていきます。

今回のパノラマ銀座縦走は、内容としては大変辛いものとなった。想定を大幅に超えたコースタイム・厳しい天候・激しいアップダウンと、北アの厳しさ、そして我々の計画や準備の甘さを思い知らされることとなった。実際何度も命の危機にさらされたし、生きて帰ってこられたのも運が良かっただけなのかもしれない。我々は改めて、謙虚な姿勢で山に臨むこと、自分たちの実力を逐次省みることを学ばなければならない。しかしながら、今回の山行でいくつものアクシデントに逢いながらも怪我一つなく帰って来られたのは、これまでの経験が身に沁みているからこそと思う。反省しつつも、自信を持って今後の山行に臨みたいと思う。




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