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2017山小屋雪訓


山小屋雪訓2017
文責:葉玉

1.日程
2017/2/11-12

2.山域
威守松小屋

3.目的
雪山日帰り山行のセルフレスキュー訓練&ビバーク訓練

4.メンバー
HWV現役:永喜(W3)、葉玉(W2)、小川(W1)
銀座山の会:永井さん(HWVOB)以下6名

5.参考資料
ヤマケイテクニカルブック「セルフレスキュー」
決定版雪崩学 等

6.記録
東所沢駅に6:30集合で永井さんの車で山小屋へ向かう。キャリアがあればプレマシーに山スキー装備4人+スノーシュー1人が載るのは驚き。
清水から山小屋は正味1時間弱。電線を辿れば着く。

1日目訓練内容
V字コンベアでの掘り出し、雪洞堀り(ソロ)、雪洞ビバーク(ソロ)、雪洞泊(ソロ)
2日目訓練内容
雪洞からの脱出(文責のみ)、ビーコン探索(クロスサーチ・掘り出しの手順)

訓練後、片付けを経てスキー下山。途中、新雪のラッセルあり。所要時間は忘れた。シールはつけっぱでもよかったかもしれない。

7.訓練内容解説
V字コンベア
埋没者を掘り出す手法のこと。最初に解説があり、その次に3人で3m堀り、最後に3m時の反省を踏まえて4,5人で2m掘った。
具体的な方法の解説は後で上げる。

雪洞堀り
佐治さん(銀座山の会)の解説後、各々適当な場所で雪洞を掘った。想定としては日帰り山スキーでパーティとはぐれて単独ビバークすることになった状態。時刻は暗くなる40-60分前ぐらいか。
これも詳細は後で上げる。

雪洞ビバーク・雪洞泊
夕食後、上記の想定でビバーク訓練を行った。20時過ぎ開始で24時までは粘ろうという趣旨。耐えきれなくなったら小屋に戻るなりシュラフを出すなりして対応する。
主な装備はシュラフカバー・ビバークシート・ツェルト・ろうそく・ゲルメタ・テルモス・金属製食器・ザック等。勿論、日帰り想定なのでマット・シュラフは使えない。各々が日帰り山行に持って行く装備で挑んだ。以下は文責の感想。

20時 荷物をまとめて小屋を出る。雪洞まではシール歩きで2分ほど。雪洞に着くとツェルトで入口を塞ぐ。スキーがあると便利。一つ注意しないといけないのは、スコップを内側に入れてないと翌朝出られなくなるということ。
20:45頃 内部での荷物の整理が終わって一息つく。この時の着用装備は毛下着(中厚)上下、フリース(ユニクロ)、ダウンジャケット(ユニクロ、ULではない)、ヤッケ上(ゴア、40デニール)、ヤッケ下(H2NO、75デニール)、靴下(冬用)、兼用靴。暑かったので手袋は脱いだ。ザックを尻に敷き、壁にもたれかかり足を伸ばしてテルモスを抱き徒然と時を過ごす。文責が持ってきたT先輩のテルモスは壊れていたようで湯たんぽのように熱を発していた。
21:20頃 下半身が寒くなってきたのでシュラカバとビバークシートを取り出し、下半身はその中に入る。この時ブーツのアウターは脱ぎ、インナーグローブを付ける。同上の姿勢でうつらうつらし始める。
22:00頃 いよいよ上半身も寒くなってきたのでシュラカバとビバークシートに全身入る。毛手袋を付ける。そこそこ眠れる。
24:20頃 寒さで起きる。時計を見ると日付を超えていたのでシュラフとマットを取り出し寝る。
深夜(時刻不明) 足がつりそうになって目が覚める。インナーブーツを脱ぐ。
7:05 外からの声で起こされる。片付けて雪洞を出る。入口を塞いだツェルトの上に大量の降雪があり、雪洞から出るのに苦労する。上に押してもびくともしないので、あまりプロテクトしなかった入口側面の雪を掘って上半身だけ外に出し、スコップでツェルト上の雪を掻き出した。
7:50 小屋着
 
(補足):w1小川
雪洞造設にあたり自分は造設した場所柄、佐治さん長野さん他ビバークに練達した社会人山岳会員の見本を見させてもらったため比較的快適な雪洞の造設に成功したためその記録を記しておく。ちなみに結果を先に述べると自分はシュラカバとビバークシートのみで20時頃から翌朝6時まで生き延びることに成功した。
雪洞造設の極意
1.横に寝れるように作るべし
 普通洞窟というとまっすぐ奥に向かって伸びるものを想像しがちである。実際自分も最初は頭を奥にして入り口に向かって足を延ばせる一直線の雪洞を作っていた。この作り方をしていると一番奥の壁を削り雪を掻きだすのに手間がかかる。しかも最終的に入り口近くを塞ぐのはスペース上難しかった。なにより最終的には入り口近くの体の部位は外気に近く冷えてくる。しかし近くで雪洞を作るベテランの雪洞を観察してみると入り口の穴の深さこそ浅いものの内部が横に広がっていた構造となっていた。この穴では人は雪洞に対して横を向いて寝ることになる。この構造にすることで奥の堅い雪の層を掘り削ることなくスペースを広げられる、入り口の縦穴を塞げば内部から容易に閉鎖できる、入り口から頭と足が最も遠くなり外気からの冷えの影響が少なくなる。といった利点がある。
2.天井はアーチ状に
 建築上の観点からいってアーチ状にすることでかかる力が分散され大量の積雪にも耐えうる強固な雪洞となる。仕事柄詳しい佐治さんによると一番よくないのは平らな天井だそうだ。また、快適性という観点からもアーチ状は大事になる。天井が中央部だけでも高いと中で動きやすいというのもあるが、なにより天井から水が滴り落ちてこないというのが大事な点だろう。
3.広めに作る
 自分はシュラフをもっていかなかったため、リュックを敷いていない部分は基本的に体が直に雪面に接していた。特に冷たかったのは折り曲げた状態で天井部と接していた膝で、同じく壁に接していた肩とは大違いだった。というのも上半身はダウンを2枚着込んでいたためシュラフに入っていたような状態だったからだ。ビバークシートもシュラカバも雪面とじかに接していてはあまり効果を発揮しきれていないようだった。あとで山の会の方々に話したところできるだけ雪面に触れないように広く作るのがコツらしいようだった。
以上雪洞づくりのコツでした。参考までに自分の雪洞の模式図を上げておきます。一枚目が横からの図(中にあるのはスコップとテルモス、レーションの入ったビニール袋です)、二枚目が前からの図、三枚目が上からの図です。
 

ビーコン探索
①30m離れた所にビーコンを埋めビーコンの指す方向に歩いていって電波特性を実感する。
②30m離れた所にビーコンを二つ少し離して埋め、ビーコンの指す方向に歩いて行ってどのような動きになるか体験する
③70°位の壁の中にビーコンを深く埋めクロスサーチ(後述)の練習をする。
④2班に分かれて実際にビーコン探索を行う。前半の班の時は上手くいったが、後半の班の時は埋めたビーコンの電池が切れかけていたようで電波をキャッチできないアクシデントがあった。
結局、全員でスコップとゾンデを使って掘り返した。この訓練の最後の方から天候が悪化し、大半の人は山小屋に戻った。

クロスサーチ
垂直に交わるX軸Y軸を雪面上に描き、X軸方向で最小の距離を示すラインとY軸方向で最小の距離を示すラインを特定し、その交点からXY平面に垂直なZ軸を伸ばす。埋没者はZ軸上にいるのでゾンデを刺して掘り起こす、という方法。



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